媒介契約と売買契約って何が違うの?不動産売却の契約について解説
2021.04.08
不動産売却手続きでは、専門用語や難解な文章の確認を求められることが多いです。
ただ、すべての関係者が誠実に対応してくれるわけではありません。
「わからなくても、プロの不動産業者がついているから損をすることはないだろう」と考えていると、たとえば不動産業者の営業マンが契約のデメリットをあえて伏せている場合、自分が損する取引に同意してしまうリスクがあります。
少しでも自身の財産を守れるように、ここでは媒介契約と売買契約の違いを押さえていきましょう。
不動産売却における媒介契約とは
●不動産の売却を業者に任せるための契約
媒介契約とは、
- 不動産の宣伝や売却に関する手続きを不動産業者に任せる
- 契約者はその対価として仲介手数料を支払う
という契約のことです。
不動産を売るためには、「不動産の査定」「宣伝・広告」「交渉や契約」というステップを踏む必要があります。
ただし、業界のつてや宣伝広告手段、契約に関するノウハウを持たない一般人が、個人で不動産売却を成功させるのは困難です。
そこで、一般人がプロの力を借りて不動産売却ができるように、媒介契約が利用されています。
そんな媒介契約の特徴は、お互いの制限や義務の重さによって契約スタイルが3つに分かれること。
- 一般媒介契約(他社と同時に契約できる)
- 専任媒介契約(他社と契約できないが自分で買い主を見つけても良い)
- 専属専任媒介契約(自分で買い主を探すのもNG。そのかわり業者側の制約が重い)
契約によってお互いの制約が重くなるため、どの程度不動産業者を信用するのか、どこまで不動産売却に時間を割けるのかを見極めた上で、媒介契約の種類を決めましょう。
●媒介契約の必要書類
媒介契約の契約時には、以下のような書類を揃える必要があります。
- 身分証明書(写真つきのものや実印など)
- 登記済証
- 不動産購入時にもらった資料(売買契約書・重要事項説明書)
- 売りたい不動産の詳細が分かる資料(間取り図・パンフレット)
手続き自体は身分証明書と登記済み権利書だけでも進められますが、より詳しい物件広告作りに役立ったり、不動産業者に物件の魅力を理解してもらったりできるので、パンフレット等もできるだけ準備しましょう。
なお、最初の段階で準備した資料は、買い主探しや売買契約のときにも使えるため、決して無駄にはなりません。
売買契約って何?
●不動産の値段と決済方法等を確定させる契約のこと
売買契約とは、
- 売り主が不動産を売り
- 買い主がその代金を支払う
という手続きの内容を書面にまとめたものです。
契約書を作った段階で両者が契約内容に同意していることになるため、トラブル発生時の対応等を決めておけば、責任の所在で揉めることもありません。
不動産売却では、ローンの審査等で実際の支払いまでタイムラグが生じるため、一方的なキャンセルを防ぐためにも契約の存在が重要になってきます。
●売買契約の必要書類
売買契約を結ぶ場合、以下のような書類が必要です。
- 登記済証
- 身分証明書
- 売買契約の必要書類
- 固定資産税等の納税状況がわかる書類
- 収入印紙(印紙税)
- その他不動産についてわかる資料
基本的には、売買契約を結ぶ際と大きな違いはありません。
ただ、売買契約の締結後は、「契約書の内容」によって取引やトラブル発生時の対処を進めるため、必ず署名・捺印をする前に売買契約の内容を確認しておきましょう。
両者の違いと契約上の注意点
●媒介契約は3ヵ月ごとの更新制
一般媒介契約に関しては無期限での契約も可能ですが、媒介契約は、宅建業法によって一度の契約期間が最大3ヵ月に制限されています。
そのため、売却期間が3ヵ月を越える場合は再契約、または違う不動産業者との契約が必要です。
一方、売買契約は、契約の時点で決済日・引き渡し日を決めてしまいます。
最初に指定した期日で不動産と代金を交換できない場合、契約不履行のペナルティを受けるため気をつけましょう。
●売買契約を結ぶと安易な解約ができない
不動産業者に支払う仲介手数料は、「物件の引き渡し日」に精算する後払いの報酬なので、「売買契約を結ぶ前」であれば、契約解除しても3ヵ月たって契約を更新しなかった場合でも、一切お金がかかりません。
しかし、売買契約の締結後は話が別です。売買契約では、不動産と代金の引き換えを約束しているため、「他に売りたい人が見つかった」「やはり自分で所有しておきたい」といった一方的な事情でキャンセルすると、買い主から受け取った手付金を倍額で返す必要があります。
媒介契約と売買契約では解約の重さが変わってくるため、売買契約を結ぶときは慎重に考えましょう。
まとめ
不動産売却をするうえで、避けては通れないのが媒介契約と売買契約の違いです。
両者はどちらも不動産売却に必要な手続きですが、契約相手や契約解除に対するペナルティの重さが違います。
媒介契約の種類が良くわからないまま適当に決めてしまったり、売買契約書の内容を確認せずに不利な契約を交わしたりすると、損をしてしまうのは自分自身なので、不動産の売却時は必ず契約書の確認に時間をかけましょう。