安易な値引きはトラブルのもと!不動産売却におけるみなし贈与とは
2021.05.13
「実家の土地が余っているから、子どもに安く売ってあげよう」
「不要な土地を親戚に買い取ってもらう」
など、不動産を親族間で売却する場合、「みなし贈与」に気をつけましょう。たとえ法律や税の知識がなかったとしても、相場より明らかに安い金額で不動産を売却すると、相場との差額に対して贈与税がかかってしまうからです。
ただ、不動産売却を検討する方の大半は、生まれて初めて家や土地の売却をするため、みなし贈与が何なのか理解できないでしょう。
そこで今回は、不動産売却におけるトラブルのひとつ、みなし贈与について解説します。
みなし贈与って何?
みなし贈与とは、
- 親族間での不動産売却
- 売却価格が相場よりも明らかに安い
といった場合に、「相場との差額を贈与した」とみなされてしまうルールのことです。どこまでを親族とするかは明確に規定されていないため、判断の分かれる部分もありますが、いわゆる被相続人と相続人(親と子など)間での不動産売却はみなし贈与になりやすいため、注意する必要があります。
なお、みなし贈与と判断される基準の一つ、売却価格の安さに関しては、個別具体的に考えるのが原則です。こちらも明確な基準はないので、みなし贈与を避けるためには「適正価格での売却である」という証明が必要になってきます。親族間で不動産の値引きをすると、額によっては税務署にみなし贈与と判断され、贈与税の納税通知が届くことになるため注意しましょう。
通常の不動産売却にはないみなし贈与のデメリット
●適正な売却価格との差額に対して贈与税がかかる
不動産売却手続きをみなし贈与とされてしまう最大のデメリットは、贈与税が発生してしまうことです。通常、持ち家を売却する場合、税の控除を使って売却代金を3,000万円控除できるため、多くのケースでは譲渡所得税を納める必要がありません。
しかし、贈与税の課税基準は、「年間110万円以上の贈与があること」なので、売却価格と客観的な不動産価格に110万円以上の差があれば、その額に対して10%から最大55%の贈与税がかかってしまいます。通常の不動産売却なら、負担する必要のなかった税金を納めることになるのです。
●住宅ローンの審査が厳しくなる場合がある
みなし贈与の不動産売却では、買い主側が住宅ローンを利用しようと思っても、審査に通らない可能性があります。なぜなら、親族間売却で不動産業者を通していないケースだと、売買契約書などの内容にミスがあっても気づけないからです。1,000万円以上の融資にも対応している住宅ローン審査は、一般的なローンに比べてそもそも審査が厳しいことで知られています。審査内容の詳細は非公開ですが、売買時に作成する書類に抜け漏れやミスがあれば、本審査まで進めません。
また、住宅ローンは、購入する物件に抵当権を設定することで、万が一、返済が滞った場合に元金を回収するというシステムになっています。物件自体の築年数が古い場合、たとえ金融機関が住宅を差し押さえても十分な金額で売却できず、高額なローンを組めないといった問題点も出てくるため注意が必要です。
みなし贈与を回避するために重要なこと
●客観的に見て妥当な値付けを行う
親族間の不動産売却であっても、売却代金が客観的に妥当なものであればみなし贈与にはなりません。そのため、まずは親族間であっても大きな値引きをするのは避けましょう。
ただし、不動産の適正価格や相場を個人で調べても、本当に正しいか自信を持てない場合もあります。不動産業者に見積もりを頼んだり、不動産鑑定士に依頼して不動産の適正価格を調べてもらったりするのがおすすめです。
第三者に売却価格の妥当性を証明してもらえば、「個人的な事情で不当に安く不動産を売った」と判断されづらくなりますし、「知らないうちに格安で売却してしまった」というミスも防げます。
●親族間・親子間の売却でも不動産業者に仲介を頼む
みなし贈与の回避という意味では、不動産業者に仲介を頼むのもおすすめです。親族間や親子間の取引では、お互い人柄を知っているだけに業者を通さない個人売却を選ぶ場合もありますが、不動産の個人取引はトラブルに発展するリスクが少なくありません。お互いに不動産の知識がないと、みなし贈与を始めとした思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性があるため、契約内容のチェックや契約書づくりをしてくれるパートナーとして、不動産業者を頼りましょう。
まとめ
親戚や親子など、血縁関係にある者同士で不動産を売却する場合、安易に値引きをするとみなし贈与になってしまい、相場との差額に対して贈与税を納める必要が出てきます。贈与税は税率の高い税金ですし、自宅の売却であればかからなかったはずの税金を負担するのはお金のムダです。みなし贈与は、家族間の取引であっても不動産業者に仲介を頼むことで十分回避可能なので、余計な出費を避けるためにも不動産売却ではプロの力を借りましょう。