子どもに家を残すと多くの場合損をする!?家じまいのススメ
2021.05.13「子どもに財産を残してあげたい」と考えるのは親心。しかし、不動産に関しては、必ずしも家を財産として残してあげることがお子さんやお孫さんの喜びにつながるとは限りません。なぜなら、不動産は現金と違って分割しづらく、相続やその後の売却手続きも大変だからです。
今回は、家族に負担を残さない財産整理、家じまいの進め方や注意点についてお伝えしていきます。
家族に「自宅」を相続させるデメリット
持ち家を所有している方に家じまいをおすすめする理由は、不動産を残すと遺産相続の難易度が高くなってしまうからです。日本では、「法定相続人」「法定相続分」といった考え方に基づいて遺産の相続を行っています。法定相続人が手にする遺産の割合は、配偶者が2分の1、そのほか、お子さんがいる場合は残った2分の1を等分で分ける、つまり「できるだけ公平に分割する」のが基本的な考え方です。
ここで問題になるのが、不動産は現金と違って細かく分割するのが難しいこと。 たとえば、2,000万円の持ち家と500万円の現金を、故人の配偶者と子ども一人の計2人に相続させる場合、公平に1,250万円ずつ分割するためには自宅の売却が必要です。単純に「家」と「現金」という分け方をすると、金額の少ない側は不満を覚えてしまうでしょう。所有権を分割するという考え方もありますが、不動産の共有名義化は、メリットとデメリットの両方を持つ手続きなので、ただでさえ故人が亡くなり、葬儀の手配などで忙しくしている最中に慌てて決めるのはおすすめできません。
また、不動産の売却には早くても3ヵ月程度の時間がかかります。財産内訳の大半を不動産が占めていると、「高額な不動産があるため相続税の納税が必要になったが、遺産の現金だけでは支払いきれない」といったケースになったとき、遺族を困らせてしまうのです。
その点、前もって自宅を売却して売却しやすい駅近マンションへ住み替えたり、老人ホームへの入居で現金の比率を高めたりして財産を分割しやすい状態にしておけば、不公平感から発生する相続トラブルのリスクを減らせます。
自宅を相続させるメリットはあるの?
持ち家を遺族に相続させるメリットは、残される家族が住居を失わずに済むことです。高齢になってくると、賃貸物件の入居審査に通りづらくなります。年齢によっては、改めて住宅ローンを組んで家を買うという選択肢も取れないため、家じまいをするなら、自分が亡くなっても家族が安心して過ごせる住環境を確保することも重要です。
また、自宅という現物資産を残しておくと、家を担保にして生活資金を借りられるリバースモーゲージなどの制度も利用できます。とはいえ、長年暮らして経年劣化してきている広い家を管理するのは大変です。生活面の労力や介護のしやすさなどを考えると、「老後の暮らしに合った家」に住み替えるための家じまいをおすすめします。
家じまいで金銭や労力の負担が少ない相続を実現しよう
不動産の相続は、
- 遺産分割の話し合い
- 不動産の相続登記
- 住む予定がなければ住宅の売却、または定期的な清掃等の管理
などが必要になる手続きです。事前に遺言を作成しており、資産の整理や不公平感のない遺産分割の準備をしているならともかく、一般的な相続では十分な準備ができていないことも少なくありません。家じまいは、扱いの難しい不動産を売却することで資産を管理しやすいように整理し、相続トラブルや相続の負担を軽減するためのアイデアでもあります。ある日、突然に自分が死んでしまったとしても、家族に相続トラブルを起こさせないように、家じまいで資産整理を進めましょう。
家じまいの進め方と注意点
家じまいの進め方は、以下の通りです。
- 住宅売却後の過ごし方(住み替えるのか、賃貸に住むのかなど)を決める
- 不動産業者に相談し、現在の住居を売却
- 売却資金を使って新居に移る
なお、家じまいの手続きは、財産を整理すること、相続について考えていることなどを家族と共有した上で始めましょう。不動産売却に時間がかかっても良いように、できるだけ早めに動き始めることも大切です。
ただし、介護施設への入居を検討している場合、入居待ちで希望の施設に入れない可能性があるため、数年ほど自宅を維持しておくことをおすすめします。自宅から離れて3年以内であれば、税の特例を使って売却時の税負担を大幅に軽減できるため、状況に応じて売却のタイミングを決めましょう。
まとめ
持ち家の相続は、遺族に対して大きな負担をかけかねない行為です。そもそも、遺族やお子さんが遠方に住んでおり、相続した家で暮らす予定がない場合、家を残しても活用してもらえません。しかし、家じまいをして財産を分けやすい構成にしておけば、相続の負担を減らせますし、不公平な遺産分割による相続トラブルなども避けられます。
不動産の売却を使った終活に興味が出てきたら、まずは住宅売却後の過ごし方を決め、不動産業者に相談しましょう。