いつ売るのが適切なの?高齢の親が持つ不動産の売却タイミングとは
2021.06.02
両親が不動産を所有していて、相続しても利用する予定がない場合、基本的には親が持つ家や土地をいずれ売却することになります。なぜなら、使わない不動産を持っていると毎年固定資産税や都市計画税がかかるだけでなく、建物の維持管理も必要になるからです。
ただ、ここで立ちはだかるのが、「親が持つ不動産はいつ売るのがベストなのか」という問題。
今回は、不動産の売却タイミングの違いについてお伝えしていきます。
不動産はタイミングによって売却の難易度が変わる
高齢の親が所有している不動産を売るときの注意点は、「いつ売るか」によって売却の難易度が大きく変わってくることです。たとえば、親が存命の内に不動産を売却する場合、所有者である親の同意を得る必要があります。子ども側が将来のことを考えて物件を売りたいと考えていても、親が承諾しなければ売却はできないため、どうやって親を説得するかという問題への対処が必要になるわけです。かといって、親が入院したり介護施設に入居したりすると、委任状や後見人制度の利用が必要になってきます。親がいつまで元気でいられるかわからない以上、想定できるリスクやデメリットを考えて、適切な売却タイミングを選びましょう。
目立った問題が出ていない内に売る
高齢の親が持っている不動産を売る際に、最もトラブルになりづらいのは親が元気でいる内の売却です。基本的に、不動産は築年数が浅ければ浅いほど売りやすいとされています。住宅自体古くなると設備の入れ替えや故障等も増えてくるため、メンテナンスコストを考えても早めに売った方がお得です。
また、親御さんが元気であれば、売却を選ぶ理由や相続に向けた財産整理等について時間をかけて話し合えます。財産の扱いや遺言について決めておけば相続トラブルをある程度予防できますし、財産の整理による相続税の節税対策にも取り組めるので、両親が資産を持っている場合一度は相続や財産について話し合っておきましょう。
親が認知症になってから売る
「まだ元気だから」と売却を先延ばしにしていた結果、親が認知症になってしまったというケースです。不動産売却は、「本人の意思で売却する」ことが前提となっています。認知症の進行状態によっては適切な意思決定ができないと判断され、契約書を作っても無効になるため、親が認知症になると不動産を売却できません。
親が認知症になってしまった場合、「成年後見」制度を使って、親の財産を管理できるようにする必要があります。認知症になる前であれば、任意後見制度といって親に後見人を指名してもらえますが、医師の診断の結果本人に意思能力がないと判断された場合、家庭裁判所への申し立てが必要です。裁判所を利用した法定後見人選びでは、親や申請者ではなく家庭裁判所が誰を後見人にするか決めるため、たとえば後見人になりたい親族が複数存在し、自分以外の人間が指名された場合は問題がこじれてしまいかねません。親がいつ認知症になるかわからない以上、こうした問題を避けたいなら財産の扱いについては早めに話し合う機会を持った方が良いでしょう。
介護施設や病院へ入った後に売る
「親が介護施設や病院に入って、実家に住む人がいない」といったケースです。住宅は誰も住まなくなると急速に劣化が進むため、年単位で利用する予定がない、親が自宅に戻ってくる予定がない場合は思い切って売却することをおすすめします。
ただ、所有者が介護施設や病院にいる場合、判断能力に問題がなくても不動産業者の元を訪問できないため、委任状の作成か弁護士などの出張が必要です。親自身が直接不動産業者の窓口に出向いて手続きするよりも手間がかかってしまうため、親・業者の間に立って売却を進めましょう。
親が亡くなり不動産を相続してから売る
親が亡くなり、不動産を正式に相続してから売るパターンです。親が所有者だったこれまでのケースと違って、不動産が自身の持ち物になっているためスムーズに売却できます。
ただし、相続税の納税期限は相続開始から10ヵ月以内なので、売却に時間をかけられません。遺産分割協議が長引くと、最終的に値引きをしてでも不動産を手放す必要が出てきます。遺産分割協議は、何気ない一言がきっかけとなって骨肉の争いになるケースも少なくないため、相続後の売却を検討している場合は親に遺言を残してもらうと良いでしょう。
まとめ
高齢の親が持つ不動産は、できるだけトラブルになりづらいタイミングで売却するのがおすすめです。親が認知症になったり、病気や介護で入院したりしてから財産整理や財産の処分を検討し始めると、家庭裁判所に申し立てをして後見人を立てたり、委任状を書いてもらったりする必要が出てきます。遺産相続時の話し合いがこじれる可能性もゼロではないため、将来的に住む予定のない不動産を親御さんが持っている場合は、親が元気な内に話し合い、財産をどう受け継ぐのか決めておきましょう。