不動産売却における「囲い込み」と「両手仲介」のリスク
2021.07.09不動産売却手続きでは、売り主の戸惑いや無知につけこんで不動産を安く買い叩いたり、業者側に有利な契約に誘導したりするケースが存在します。
ただし、だからといって、不動産の素人である売り主がゼロから不動産の勉強をするのは現実的ではありません。
そこで今回は、不動産売却をするうえで最低限知っておきたい悪質な不動産売却の手口と、悪徳不動産業者との契約を避けるために役立つ業者の選び方について解説します。
囲い込み・両手仲介とは
不動産売却における囲い込みとは、他業者に買い主を見つけられないよう物件情報を隠したり、他業者からの問い合わせに嘘をついて情報提供を拒んだりする行為のこと。なぜ囲い込みが問題視されるのかというと、売り主の利益にならないからです。
通常、専任媒介契約や専属専任媒介契約といった売り主・業者間での契約を交わしたら、業者は物件情報を「レインズ」とよばれる不動産業者向けデータベースに登録する義務があります。レインズで物件情報を共有するからこそ、他業者経由で複数の買い主から問い合わせが入り、良い条件で不動産を売却できるわけです。
しかし、売り主側の業者が物件情報を囲い込んで自社で買い主を見つけると、売り主と買い主双方からの仲介手数料を両取りできてしまいます。こうした「両手仲介」によって得をするのは、基本的に業者だけ。他業者からの問い合わせを拒むことで売却が長引いたり、買い主と結託して物件を買い叩いたりと売り主にとってデメリットの多い行為なので、「両手仲介を目的とした囲い込み」は悪質だとされています。
大切な不動産を問題のある業者に預けるとどうなる?
●売却価格が下がる
両手仲介を目的とした囲い込みでは、不動産の売却価格が下がりやすいです。理由は2点あり、一つは他業者経由での買い主候補を退けてしまうと価格競争が起こりづらいこと。もう一つは、売却価格を下げても業者は得をすることです。
不動産業者に支払われる仲介手数料は、「不動産の売却価格×3%+6万円」が法律上の上限となっています。売却価格を下げると業者側も利益が減ってしまうので、通常なら業者は高額売却を諦めません。
しかし、囲い込みによる売却であれば、売り主と買い主の両方から仲介手数料を取れるため、多少売却価格が下がっても業者だけは利益を確保できます。囲い込みをする業者には、高額売却に向けた努力を期待できないのです。
●不動産の売却期間が長引く
囲い込みでは、売り主側の業者が単独で買い主を探すため、買い主が見つかるまで時間がかかります。レインズを通じて全国の不動産業者から問い合わせが入ってくる、通常の不動産売却スタイルの方が短期間で売却しやすいです。
また、わざと売れ残りの期間を長引かせることで、売り主に値下げを承諾させて物件を買い叩くといったやり口も存在します。
●囲い込みをされているかどうか気づくのは難しい
両手仲介を目的とした囲い込みについて、最も大きなデメリットは「不正をされていても気づけない」ことです。レインズに物件情報を登録すると、閲覧用のIDとパスワードが発行されるため、「レインズのIDを教えて欲しい」と伝えれば「レインズ未登録での囲い込み(専任媒介契約・専属専任媒介契約では違法)」を回避できます。
しかし、レインズに登録済みで、「現在申し込みが入っていて紹介できない」といった返答で他業者をシャットアウトしている場合、本当に交渉中の可能性もあるので、囲い込みと断定できません。
だからこそ、不動産売却では悪徳業者を避ける知識が必要になってきます。
不動産業者の良し悪しを見分けるポイント
●複数社の対応を比較する
不動産業者の良し悪しは、一社だけを見てもわかりません。そのため、業者選びでは複数の業者に査定を頼んで対応を比較することをおすすめします。営業マンの対応やオフィスの雰囲気、査定結果等を比べることで、より良い業者に出会える確率が高くなるでしょう。
また、相談へ行った際に、気になっている不動産業者の評判を聞いてみるという手もあります。複数の業者が口を濁したり、良くない評価を下したりしている業者がいれば要注意です。
●査定時に物件の欠点を質問する
売却したい不動産の査定をしてもらったら、「物件の強み」や「物件の欠点」を質問しましょう。どのような物件にも、大なり小なり欠点はあるものです。契約の獲得を優先して不利な情報を隠す営業マンがいる場合は、注意することをおすすめします。
また、査定結果にどの程度の根拠があるか確かめることも重要です。過去のデータなどを使って、専門知識を持たない売り主にわかりやすく説明してくれる業者を選びましょう。
まとめ
売り主だけでなく買い主からも仲介手数料を受け取るため、不当なやり方で不動産情報を隠すのが両手仲介を目的とした囲い込みという手口です。
ただ、残念なことに、一般人が囲い込みの有無を暴くのは簡単ではありません。複数の業者から見積もりを取り、その対応を比較することで、悪質な不動産業者との契約を避けましょう。