みなし贈与に要注意!親戚や家族に不動産を売却する際のポイント
2022.02.18
親戚や家族といった身近な相手に不動産を売却するときは、「みなし贈与」にならないよう注意する必要があります。
なぜなら、不動産売却は、みなし贈与をすると税金が大幅に高くなってしまうからです。
そこで今回は、不動産売却における注意事項の一つであるみなし贈与の簡単な解説と、みなし贈与を回避するためのポイント・注意点をお伝えしていきます。
親族間の不動産売却はみなし贈与に気をつけよう
●みなし贈与とは
みなし贈与とは、不動産を市場の適正価格より安く売ったとき、適正価格との差額を相手への贈与とみなす制度のことです。
本来、不動産売却手続きは、不動産を渡して代金を受け取り、その代金から必要経費を差し引いた部分に対して「譲渡所得税」という税金がかかる仕組みになっています。
たとえば、300万円の必要経費をかけて不動産を3,000万円で売ると、差額の利益2,700万円に対する譲渡所得税の納税が必要になるわけです。
しかし、不動産を親族へ1,600万円で売った場合、売却利益1,300万円に対する譲渡所得税に加えて、本来の売却価格との差である1,400万円に対する贈与税も課税されます。
さらに、譲渡所得衛士と贈与税はあくまでも別の税金です。
日本は稼いだお金と税額を自分で計算して税務署に報告し、納税する自己申告制度を採用しているため、譲渡所得税の確定申告と納税手続きに加えて、贈与税の申告・納税も必要になります。
●みなし贈与は税率が高い
親戚や家族間で不動産を売買する際、みなし贈与にならないよう注意すべき理由は、譲渡所得税よりも贈与税のほうが税率は高くなるからです。
譲渡所得税は、不動産の所有期間が5年を越えているかどうかで税率が変わるものの、最大税率は30%。
一方、贈与税の最大税率は55%です。控除等を差し引いた贈与の額が600万円以上1,000万円以下になると税率40%となり、一般的な不動産売却よりも高い税率で税を納めることになります。
贈与税は、贈与を受けた側が負担する税金です。
相手のためを思って本来より安く不動産を譲ったとしても、かえって贈与税で相手側の負担を増やしてしまいます。
親しい相手との不動産売却はみなし贈与にならないように気をつけましょう。
親戚や家族に不動産を売る場合のポイント
●不動産業者の査定を受けて適正価格で売る
親戚や家族に不動産を売ったとき、みなし贈与になるのは「適正価格よりも安く不動産を売った」ときです。
言い換えると、たとえ親族間の不動産売却でも、売却価格が適正なら贈与とみなされることはありません。
ただ、素人だと不動産の適正価値は分からないので、業者の査定を受け、市場での適正価格で不動産を売却しましょう。
●口約束ですませず契約書を交わす
みなし贈与を回避するためには、「みなし贈与なのではないか」という疑いの余地のない取引をすることが重要です。
そこで役立つのが、不動産売買の際に契約書を交わすこと。
相手を信頼していれば口約束で売却価格を決めるといった取引も可能ですが、書面のない取引は客観的な信用性が下がります。
また、不動産売却取引は、動かす金額が大きいだけあって小さな問題もトラブルになりやすいです。
書面がないとどちらの責任があるのか判断できずに揉めごとが長引くため、必ず契約書を交わしましょう。
●不動産業者に取引を仲介してもらう
親戚や家族相手に不動産売却をする場合、不動産業者に仲介を頼むことをおすすめします。
査定を受けて適正価格を調べ、自分たちで契約書を作るといった当事者間だけの方法は、法的に不備のある契約になる可能性があるからです。
また、不動産業者という第三者に取引を仲介してもらえば、専門用語や重要事項の説明等を受けられます。
トラブル予防の観点からいっても、不動産売却は業者経由で行いましょう。
身近な相手と不動産取引をする際の注意点
関係性が近い相手との不動産取引は、住宅ローンの審査に通りづらいという問題もあります。
理由は、第三者同士の取引と違って、親族間の不動産売却は「相続税から逃れるために生前贈与したいが、贈与税が高いため売却という形でお金と不動産をやり取りしている」といった不正目的で利用されるケースがあるからです。
また、たとえば親が長男に黙って次男に不動産売却をした後、次男が「本来ならその不動産も遺産相続の対象だろう」と指摘してトラブルになるなどのリスクも無視できません。
そのため、金融機関は親族間の不動産売却に対して厳しい姿勢を取っています。
また、住宅ローンを組めない場合は分割払い等を設定することになりますが、このときも無利子にしてしまうと利子分がみなし贈与の対象です。
まとめ
親子間や親戚間で不動産を売却する場合、売却価格や支払い方法の詳細によって取引の一部を贈与とみなされる場合があります。
みなし贈与にあたる取引をすると、本来納めるべき税金よりも高い贈与税がかかるため要注意です。
不動産業者に土地や物件の査定・仲介を頼み、法的にも適切な取引をすればみなし贈与を回避できるので、親しい間柄で不動産をやり取りするときも不動産業者に協力してもらいましょう。