相続問題の基礎知識!相続放棄って何?放棄すると家は売れないの?
2022.09.09相続に関する手続きには期限があり、適切な知識を持っていないとトラブルになる可能性もあるため、親が不動産を持っているなら相続問題に関する勉強が必要です。
ただ、相続に関する知識は膨大で、そう簡単には網羅できません。
そこで今回は、遺産相続を回避する手段、相続放棄や相続放棄した場合に不動産はどうなるのかなどについて解説します。
相続放棄って何?
相続放棄とは、遺産相続を断る手続きのことです。
実は、故人から相続できる財産には、現金や不動産といった正の財産だけでなく、借金や税金の滞納を始めとした負の財産も含まれます。
相続を承諾すると、正の財産も負の財産も両方相続人が引き取ることになるため、人によっては「相続した方が損をする」ケースも出てくるのです。
本人が作ったわけでもない借金の返済に悩まされたり、使う予定もなく売れ残りそうな不動産をもらって売却できずに持て余したりするのは健全な状態とはいえないので、相続そのものを拒否できるようになっています。
なお、相続放棄ができるのは、「相続が始まったことを知ってから3ヵ月以内」です。3ヵ月以内に相続放棄の手続きをしなかったら、相続は問題なく行われたという扱いになり、相続税の徴収などが行われます。
期限は、あくまでも相続があったことを知ってから3ヵ月なので、多少の余裕はありますが、手続きを忘れると放棄できなくなるので覚えておきましょう。
相続を放棄すると不動産は売却できない
相続放棄について話す際、良く問題になるのが「借金だけ放棄して、現金や不動産だけ相続できないの?」という疑問です。
結論からいうと、相続を放棄すると不動産は売却できません。
なぜなら、相続という手続きのルール上、相続人は「借金も含め全てを相続する」か「借金も含めて全てを放棄する」の2種類しか選べないようになっているからです。
相続を放棄するということは、現金も不動産も保険金も諦めるということなので、不動産が欲しいなら遺産を相続する必要があります。
先に遺産の整理を始めると放棄できなくなるので要注意
相続放棄は、
- 郵便受けに借金や税金の督促状が溜まっている
- 現金がほとんどなく家も郊外の物件なので売れそうもない
- 他の相続人とのトラブルを避けるため
など、相続したほうが自分にとってマイナスが大きいと判断したときに利用する手続きです。
ただ、相続する財産がプラスなのかマイナスなのかを考えるためには、故人がどういった財産や借金を持っていたのかを調べる必要があります。
ここで注意して欲しいのが、故人の財産を売ったり使ったりほかの人と分けたりした時点で、相続放棄できなくなってしまうこと。
たとえば、家や家の中に残っていた美術品を売ったり、預金口座を解約してお金を引き出したり、借金の返済をしたりすると「相続する意思がある」と判断されて相続放棄できなくなります。
相続放棄するか売却するかはどう決める?
●大切なのは財産の調査と不動産の査定をすること
相続放棄するかどうか迷う場合、弁護士などに相談して財産の目録を作り、時価に換算できる財産は全て見積もりを取りましょう。
不動産の場合は、不動産業者に頼んでいくらで売れそうなのかを調べてもらいます。
もし、正の遺産と負の遺産を合わせても黒字になる場合、または不動産自体が高額売却できる場合は、相続した方がお得です。
逆に、不動産を売っても借金や債務が残ってしまうなら、遺産相続をしても損をするだけなので相続放棄した方が良いでしょう。
なお、不動産の中には、売れ残るリスクの高いものも存在します。
相続を放棄すれば不動産の固定資産税を納める必要がなくなりますし、家を管理する手間もありません。
不動産を売るための時間や労力をほかのことに使えるのが、不動産に関する相続放棄のメリットです。
●思い入れの深さによって決めても良い
財産の内訳によっては、「相続放棄をしても良いし、しなくても良い」という塩梅になることもあります。
こういったケースでは、不動産を始めとした故人の財産に思い入れがあるか、持っておきたいかどうかで考えましょう。
たとえば、実家をリフォームして自分の家にしたいといった思いがあるなら、多少マイナスでも不動産を相続した方が結果的にお得な場合もあります。
人それぞれ遺産に対する思い入れの深さやこだわり、重視するものが違うので、相続放棄をするか家を相続して売るか悩んだら、ご自身が一番後悔せずにすむ選択を選びましょう。
まとめ
現金や不動産を相続することになったとき、相続人は故人の財産を受け継ぐか、それとも相続放棄をするか選ぶ必要があります。
相続放棄できるのは、相続があることを知ってから3ヵ月以内。
期限を迎える前に財産を処分したり使ったりすると放棄できなくなってしまうため、注意が必要です。
なお、「家だけを相続して借金は放棄する」といった選択はできません。相続した方が良いのか放棄した方が良いのか、どちらが自分にとってよりお得で納得できる対応かを考えるためにも、相続が起きたらまずは財産の目録を作り、不動産業者に頼んで売却価格の査定をしてもらいましょう。