家を売却する際に、残債があると売却する事はできないのか
2015.10.26家を売却する条件として、ローンを完済して抵当権を消さなければならないと思う方が多いと思います。しかし、ローンを完済しておらず債務が残っている「残債」があっても、家を売却することは可能な場合が多いのです。
今回は、残債がある場合に売却ができるケースについてのポイントとその流れをお伝えしたいと思います。
住宅ローンの残債があっても売却できるのか
Point 残債よりも不動産の価格が高ければ売却が可能
買い主や登記を代行する司法書士は、本当の売り主という動かぬ証拠がなければ取引に不安を覚えます。売り主からすると面倒に感じるでしょうが、所有権者としての証明をしなければなりません。
住宅ローンの残債がありながら売却するケースは大きく3つあります。
- 債務整理や破産などやむを得ない場合
- 任意売却
- 転勤や買い換え希望など自分の積極的な意志によるもの
例えば、残債が1,000万円、売却価格が1,500万円であれば売却する事により債権者である銀行は債権を全て回収できます。このような話であれば、金融機関はノーとは言えませんので不動産会社を通じて問題なく売却は可能です。
残債よりも高く不動産を売却出来るのであれば、住宅ローンの残債が残っていても売却は可能です。
ただし、注意しなければならないのは、金融機関にとって本来であれば今後も利息を得ることが出来た契約が終了するということは、予測していた利息分の損を出すことになります。
債務者にはその損失の一定額を穴埋めするために「一括繰り上げ返済手数料」という名目の費用がかかることが多いので、その金額を確認すべきでしょう。
売却するには、抵当権の抹消が必要
Point 抵当権の抹消と不動産売買は同時でOK
住宅を購入する際、基本的に購入する不動産を担保に入れます。このような法律行為を「抵当権設定行為」と言います。
抵当権が付くと、誰でも法務局で債権者や借入金額等を確認する事ができます。また、債権者は第三者に自分の権利を主張できますので債務者が隠れて不動産を売却しても新たな所有者に同じように権利を主張できます。
このような強い権利である抵当権があるうちは誰も不動産を買ってくれませんので、抵当権を消す作業である「抵当権抹消手続」が必要になります。
ここでよく間違われるのが、売り主が残債額を用意して抵当権抹消をした後に売りに出すと思われる事です。しかし、残債を払うお金の借り入れの手配できなければ売りに出せないのであれば、借り入れのできない多くの売り手は不動産を売却できません。
そこで、実際には法的権限を持つ司法書士が間に入って「売却代金をもらうと同時に抵当権抹消を行う。」方法をとります。
例)
2,000万円の売却代金をもらうと同時に1,000万円の残債を支払い、抵当権抹消をします。そして、残り1,000万円が売り手の手元に残る(諸経費を除く)ことになります。
こうすれば、売り手は抵当権を先に抹消することなく売却できるというメリットがあります。自力でお金を工面して抵当権を抹消する必要がないということをしっかりと理解しましょう。
買い替えの際は、残債は新規ローンに上乗せ出来る
Point 可能だが、残債が多いと借り入れは難しく、銀行も慎重になる
最初に、残債の金額より不動産の価格が高ければローンは組めるとお伝えしました。
その前提で考えると、転勤や家族構成の変化などの理由により残債がありながら家を買い替える場合でも、新規ローンに上乗せ出来るという内容は理解できるでしょう。
ただし、注意しなければならない点があります。それは、残債が多い場合はローンが組めない可能性が高いという点です。
例)
4,000万円の価値がある不動産に3,000万円の新規ローンと残債の1200万円を合わせて申し込むことは出来きません。さらに、実際には金融機関は4,000万円の価値がある不動産には多くとも不動産価値の8~9割程である3,500万円程しか融資しないと考えるべきです。
※銀行によっては住み替えローンなどもあります。
なぜなら、不動産の価値が下がることは十分に考えられますので、そのような状況でも担保価値を失わないような貸し方を金融機関は行うからです。
以上を考慮すると、残債が少ない場合ローンは組みやすいですが、多い場合は融資の審査が通過しにくくなる傾向にあると考えたがよいでしょう。
事前にいくらで売れるかシュミレーションしよう
Point 最低でも3社に売却価格の査定を出して、1年間かけて売却をする
実際に不動産会社に売却の査定を依頼すればわかりますが、100万単位で査定額が異なる事が多いです。さらに、この金額が正しいかどうかの判断は難しいです。
この時に大切なことは、まず査定額が最も低い額で売却をした場合において、
- 残債
- 不動産仲介手数料
- 司法書士費用
- 税金関係
- 引っ越し費用
を計算して手元にどれくらい残るかをシュミレーションしましょう。
自分自身がそれで納得できるのであれば、次に査定額が最も高い会社に仲介を依頼して1年間位の期間を設定してください。
売り手に時間的余裕のない場合は任意売却に近いような取引になりますので、どうしても売却価格が低めになります。
そうならないためにも時間的に余裕があることを不動産会社にアピールして、査定を依頼した数社のうち最も高い売却価格で取引をしてもらうようにしましょう。
まとめ
実際には残債がある家の不動産取引は多いです。
その理由として、残債がある物件は築年数が比較的浅いものが多いからです。反対に、残債がない物件の多くが住宅ローンを払い終えた築30年~35年以上の物件であり、購入者はリフォームするよりも更地にして家を建てる傾向が強いので結果的に割高になるケースもあります。
このように、残債があってもしっかりとした不動産会社と司法書士を中に入れて取り引きすれば抵当権も問題なく抹消して自分に所有権移転が出来ますので問題ないでしょう。
残債があること自体は不動産取引を大きく不利にするものではありません。重要な事はいくらで売却して残債や諸経費を引いて手元に残るかという計算を、最良のケースと最悪のケースで考える事です。
この部分をしっかりと確認して問題がなければ、売却までの期間を長期に設定して少しでも高い価格で売却しましょう。