不動産売却で確定申告が不要な場合と、注意すべき点とは
2016.01.13例えば、5,000万円で購入した不動産を4,000万円で売却すると、数字の面だけを見れば、誰が見ても損を出していると答えるでしょう。
しかし、あまりなじみのない税制についての計算を見落としている場合や、過去に利用した制度を忘れてしまっている、と払う必要がない税金の支払い義務が生じるケースがあります。
そのような具体的なケースが2つありますので、売却する場合に当てはまるか確認しましょう。
赤字でも確定申告が必要な場合とは
Point 「減価償却費」と「買い換え特例」がキーワードになります
多くの方が「不動産の売却損が出て赤字なのに、なぜ確定申告が必要なケースがあるのか?」という疑問を持たれると思います。
しかし、これにはきちんとした理由があります。それは、「実際の不動産取引における金銭の動きでは売却損が出ているが、税法上は売却により利益が出たと考えられるケースがある。」ということです。
そして、その原因となるのが「減価償却費」と「買い換え特例」です。これら2つについての基本をお伝えしていきます。
「減価償却費」を引いて計算することを忘れない
Point 減価償却費のイメージが出来なくとも計算は可能です
「減価償却費」という用語は個人事業主、経営者、経理関係の立場にいる方であれば理解が深いでしょう。しかし、減価償却費を活用しない方にとってはイメージする事が難しく理解しにくいと思いますので、その基本的な定義のみをお話しします。
減価償却費とは「全費用を一回で費用として計上するのではなく、全費用を数年や数十年に分けて費用として計上する」というものです。
不動産売却の場合、減価償却費は売却する建物に対して行いますが、ここでは木造のマイホーム一戸建てを売却したと仮定してその計算式をお伝えします。
減価償却費=建物の購入代金等×0.9×償却率(0.031)×経過年数
※経過年数は端数が6ヶ月以上の時は1年として、6ヶ月未満の時は切り捨てます。
ここではマイホームの木造での償却率を記載しましたが、ほかにも軽量鉄骨、鉄筋コンクリート、業務用の木造、軽量鉄骨、鉄筋コンクリートで償却率が異なり、さらに業務用では建築年数も関係してきますので、ここでは省きます。
では、具体例を当てはめて減価償却費を出してみます。
●木造のマイホームの計算例
取得価格 |
合計 6,000万円 合計 6,000万円 建物 3,000万円 |
---|---|
所有期間 | 15年 |
売却価格 | 5,000万円 |
※わかりやすくするために取得に関わる諸費用は省きます。
建物に関する減価償却費は、12,555,000円=3,000万円×0.9×0.031×15年となります。(土地にはこのような費用は発生しません)
この数字を建物取得費から差し引くと、30,000,000円‐12,555,000円=17,445,000円となります。
最後に、売却価格から土地の取得費用と減価償却費を引いた建物の費用を合算したものを引くと、50,000,000円-(土地取得費30,000,000円+建物取得費17,445,000円)=2,555,000円となり、売却益が発生したことになります。
この事例を見たときは、1,000万円の売却損があると瞬時に判断したでしょう。
しかし、税法上は約250万円の利益が発生したことになるのです。実際には住居用の場合は「3,000万円の特別控除」がありますので、税金を納める必要はありません。しかし、不動産投資用物件である賃貸マンション、アパートや自分の娯楽のために購入している別荘には3,000万円の特別控除は適用されませんので注意しましょう。
買い換え特例を過去に適用したかを確認する
Point 自分の記憶ではなく、契約書などを手元において再確認する
買い換え特例に関しても、普段利用する計算法とは全く異なりますので見落としがちです。まずは簡単に買い換え特例についてご説明します。
この制度は、買い換えを活発にするための特例と考えて間違いはないでしょう。具体的には、「自分の家を売却した金額より高い家を買えば税金はかからない」というものです。
●買い換え特例の事例
2,000万円で購入した家が5,000万円で売れるとします。そうなると、普通に考えれば3,000万円が課税対象になるでしょう。(3,000万円の特別控除を除く)
しかし、5,000万円の家を買い換えれば税金がかからないのです。これは大きなメリットと言えます。
しかし、デメリットも存在します。それは、「買い換え特例を利用する売却物件の取得価格が将来的な税金となる。」ということです。
現時点で税金の支払いはありませんが、不動産取得時に2,000万円で購入しましたので、その2,000万円について将来的に税金が発生します。
この事例で言えば、5,000万円の家を買い換えましたが、再びこの家を7,000万円で売却するとします。
その場合は、7,000万円-5,000万円=2,000万円の税金(減価償却費やほかの減税措置はここでは考慮しません。)追加で発生しますが、過去の買い換え特例で利用した2,000万円の物件購入費も加算されて課税されるというわけです。
つまり、買い換え特例の2,000万円+今回の売却益2,000万円を合計した4,000万円が課税対象になります。こうなってしまうと、3,000万円の特別控除が利用できなくなるなど予定していなかった税金が発生してしまいます。
そうならないためにも、売却する前に契約書などの書類を見て再度確認しましょう。
まとめ
減価償却費の計算法や買い換え特例は少し難しいですので、まずは物件の売却を検討する段階で、自分に関係するかという点を見落とさない事です。
具体的な計算を出来ればよいですが、それが難しければ税務署や不動産仲介会社に相談すれば計算してもらえます。
特に、買い換え特例などは見落としてしまうと大変多くの税金を支払う事になります。
この2点については、自分に影響すると思っていた方が将来的な失敗はしにくいでしょう。