相続した一戸建てを賃貸物件にするのは損か得か
2016.01.26
大学時代に地方から出てきて、首都圏で生活を始め、マイホームを手に入れ子供も大きくなった頃になると、相続が発生しやすい時期に入るでしょう。
ほとんどの場合、将来的に地方の実家に戻るという選択は考えていないため、相続した一戸建ての処分に困ることになります。
そのまましていても、固定資産税を支払う必要があるだけでなく、状態の悪い空き家とみなされれば行政処分の対象になります。
そうなると、「誰かに住んでもらい家賃収入を得よう。」と考えて賃貸としての貸し出しを考える方も多いでしょうが、果たしてその判断は正しいのでしょうか?
一戸建ての賃貸はアパートやマンションとは異なる点が多いです。
さらに、このような一戸建ては築年数が経過しているという点も考慮しなければなりませんので、これから詳しく見ていきましょう。
賃貸として貸し出すメリット
メリットとしては2つあります。
1. 家賃収入が発生する
実家が遠方にある場合は、そのままにしていても自分にとっては何のメリットもありません。それどころか固定資産税の支払いがありますので、財産を相続しているというより負債を相続しているような気持ちになります。
しかし、賃貸として貸し出して入居者が決まれば、家賃が発生します。各物件の築年数、建物面積、立地エリアなどで家賃は大きく異なりますが、固定資産税を支払って手元に現金が残るようなケースも少なくはないでしょう。
そうなれば、処分などを悩んでいた実家を賃貸経営して維持できますし、お小遣い程度のお金を手に入れる事が出来るかもしれません。
2. 行政に特定空き家と判断されない
特定空き家とは、地方自治体により細かい判断は異なりますが、倒壊の恐れや建物が存続することにより問題があると判断された空き家のことを言います。
特定空き家と判断されますと、
- 撤去や修繕といった指導、勧告、命令
- 固定資産税の住宅用地特例から除外され、最大で約6倍も納税額の増加
- 命令に従わないと50万円以下の過料や最終的には強制撤去
の可能性が出てきます。
みなさんが思っている以上に、空き家の状態は短期間で悪くなります。数年間実家に戻らずにいたら、倒壊の危険があると親戚から連絡が来たなどよくある話です。
しかし、賃貸として貸し出していればそのような問題もないでしょう。
賃貸として貸し出す際の注意点
●注意点1 一度地元の仲介会社の担当者と実家を確認する
よくあるのが、実家が遠方だからと電話などで地元の仲介会社に依頼をするケースです。自分で思っていた家賃よりも低い場合など、心では納得がいかないが仕方なく契約をすることになります。
最初からそのような気持ちだと、遠からず何らかのきっかけで仲介会社とトラブルになる可能性が高いです。
しかし、担当者と一緒に実家を確認すれば、トイレが和式だから、お風呂の広さ、キッチン設備などが古いので家賃はこの位だろうという根拠を聞けます。
このような根拠を聞けば、担当者の家賃設定にも納得するでしょうし将来的にも仲介会社と良好な関係を維持できるでしょう。
●注意点2 入居者についての審査をしっかりしてもらう
実家が遠方にあれば入居者が決まっても、きっと年に一度も会わないでしょう。これは、入居者がどういう人間かを入居審査時にしか把握できないことを意味しますので、この時にしっかりと審査する必要があります。
質の悪い人を入居させてしまうと、いろいろな迷惑をかけられるかもしれません。そうならないためには、仲介会社から勤務先、年収などの基本的な情報だけでなく、時間や連絡の約束などについてルーズでなかったかなど人間性についても審査の項目に入れてもらうようにお願いしましょう。
●注意点3 建物の不具合について理解のある入居者を選定する
築年数の経過した一戸建ては建物の不具合がつきものです。
もし、神経質な入居者と契約をしてしまうと、「玄関が開けにくい」「階段の音がうるさい」「風が強いときにすきま風を感じる」など細かい苦情を言ってきます。
そうならないためには、古い家には少々の不具合があるという点を理解してもらえる入居者にすべきです。そうすれば、細かい苦情に悩ませられることはないでしょう。
賃貸として貸し出すデメリット
●デメリット1 修繕費やリフォーム代がかかる場合が多い
一戸建ての状態が悪ければ、貸し出す前に修繕費やリフォームをしなければなりません。
数万円~数十万円なら家賃の中から問題なく回収出来るでしょうが、数百万単位の費用がかかる可能性もありますのでリスクが大きいです。
また、入居後の雨漏りなどにも大家が対応しなければなりませんので、経費がかかるリスクがあるでしょう。
●デメリット2 収益率はかなり低いと考えるべき
一戸建ての中古物件は高い賃料では借り主が見つかりにくいので、家賃はそう高くはありません。しかし、土地が広い場合などは多額の固定資産税がかかります。
また、突発的な修繕費が加わり、管理会社に管理費を払えば非常に低い収益率となります。実家の一戸建てを貸し出すのは、不動産投資とは異なり収益がかなり低いと考えましょう。
手間を少なくしたいなら、売却しよう
築年数の経過した一戸建ては、仮に貸し出しても収益性が低く出費も多くなる可能性が高いということをおわかりいただけたと思います。
ごく一部の一戸建ては収益物件になるかもしれませんが、他の大多数は所有してもあまり得しないでしょう。
そこでおすすめなのが、売却するという方法です。
現在は、更地にするためのローンもありますので早期に売れそうなエリアであれば更地にして売る方法も良いでしょう。
そうすることにより、空き家としての心配や貸し出す場合の賃貸経営の手間などが省けますので、時間をかけずに実家の問題を解決できるでしょう。
まとめ
自分の家から遠方にある実家の一戸建てを上手く活用するためには、
- 状態の良い一戸建て
- ある程度の家賃を見込める立地
- 信頼できる仲介会社、管理会社
- コストが少ない建物管理
が必要となり、これらの条件に当てはまる家は少なく賃貸経営は難しいでしょう。
無理して賃貸経営をするのではなく、売却という方法を用いるという選択肢も検討する必要がありそうです。