親の生存中に空き家になった実家を売却する際のポイント
2016.03.01親を介護施設に預けたり、新しい土地を求めて二世帯住宅を建てたりして、実家が空き家になってしまうと維持管理コストが発生してしまいます。
こうした状況で空き家となった実家を売却する際にはどのようなポイントに気を付けると良いのでしょうか。
二世帯住宅を作るのであれば実家をどうするのか考える必要がある
東日本大震災の後、二世帯住宅を建てる家庭が増えたという話もあります。
二世帯住宅にはさまざまな経済的なメリットもありますが、双方の家族の問題として、夫婦どちらかの実家を建替えるのか、新たに土地を求めて新築するのかという場所の問題が発生します。
そして、新たに土地を求めて二世帯住宅を建てる場合には、実家が空き家になってしまうという問題も発生します。
深い思い入れのある実家ですから、例え誰も住まなくなったからといって実家を売却するという決断をするのは難しいものです。
とはいえ、空き家になった実家を維持するのにも大きなコストがかかってしまいます。固定資産税等は毎年発生しますし、実家から離れたところに住んでいるのであれば年に数回の建物や庭のメンテナンスには手間も費用もかかってしまいます。
将来、再度実家を利用するかどうか
空き家になってしまった実家は、たまに帰る場所としては良いですが、その維持管理には手間とコストがかかってしまいます。
空き家になってしまった実家をどうするのか考える時は、将来その実家に再度住む可能性があるのかどうかで対象方法を考えてみると良いでしょう。
● 賃貸に出す場合
空き家になった実家を有効利用する方法として、賃貸に出す方法があります。
この場合、将来実家に住む可能性があるかどうかで契約内容を変えると良いです。
一度賃貸に出してしまうと、賃借人の立場が強くなってしまい、住みたい時に住めなくなってしまいます。
そのため、将来実家に住む可能性がある場合には定期借家契約で、例えば契約の2年間が過ぎたら退去してもらう、といった取り決めをしておくと良いです。
逆に、将来実家に住む可能性がないのであれば一般借家契約で、できるだけ長く住んでもらった方が良いでしょう。
● 売却する場合
将来実家に住む可能性がないのであれば、空き家になってから、できるだけ早い内に売却してしまった方が良いです。これは、税金の問題があるからです。
不動産の売却には譲渡所得税が発生する
不動産を売却したことによって得た利益を譲渡所得と言いますが、譲渡所得に対しては税金が課されます。譲渡所得税の計算方法は、以下の式で計算することができます。
課税所得= | 売却利益 -(売却した不動産を取得した時の費用+不動産を売却したのに要した費用) -特別控除(居住用不動産の特別控除等) |
---|
こうして計算された課税所得に対して、以下の税率が掛かります。譲渡所得税は、不動産を所有している期間が、売却した日の1月1日において5年以下か、5年超かで税率が変わります。
長期譲渡所得 | 短期譲渡所得 | |
---|---|---|
所有期間 | 5年超 | 5年以下 |
所得税 | 15.315% | 30.63% |
住民税 | 5% | 9% |
合計 | 20.315% | 39.63% |
● 所有期間30年(住まなくなってから5年)の実家を3,000万円で売却した場合の譲渡所得税
試しに、所有期間30年で、住まなくなってから5年経つ不動産を3,000万円で売却した時の計算をしてみます。今回は取得時の費用や売却時の費用を売却価格の10%=300万円とします。
課税所得=3,000万円-300万円
所有期間30年なので、税率は20.315%
譲渡所得税=2,700万円×20.315%=約550万円
この場合、550万円の所得税を納める必要があります。
● 実家の売却のポイントは3年以内と3,000万円
不動産の売却には、その売却益に対して譲渡所得税が発生してしまいますが、「居住用財産」であれば所得税の軽減を受けられる制度があります。(居住用財産の特例)
逆に言えば、住まなくなった住宅の売却はこの居住用財産の特例を受けることができません。
この居住用財産かどうかの判定は、「その不動産に住まなくなった日の属する年の1月1日から3年以内」に売却すること、とされています。
例えば平成28年2月1日に売却した不動産は平成31年の12月31日までに売却すれば居住用財産の特例を受けられることになります。
● 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
居住用財産の特別控除の中で最も使いやすく、効果が高いのが「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です。
この特例を利用すると、3,000万円までの売却益に対して税金が課されることはありません。
ですから、空き家になって3年以内に売却することがポイントです。
この制度は、住宅は、住みながらの売却では売りづらいことが多く、空き家にしてから売りに出すという選択をした場合、3年間の猶予期間を設けるという趣旨です。
特例の適用を受けるには、実際に所有者自身が売却の対象の不動産を生活の拠点として利用していた必要があります。
このため別荘などは対象になりませんし、たとえ住民票を移していたとしても実際に住んでいなければ特例の適用を受けることはできません。
売却する予定なら、家屋は取り壊さないように
家屋がかなり古くなっている場合、敷地だけにして新築用地として売却したほうが売りやすい場合もあります。
しかし、この場合注意しなければならないのは、居住用財産の特例を受けるためには、もともとの3年以内の要件を満たした上で、家屋を取り壊した日から1年以内にその敷地の売却に関する契約が締結されている必要があります。
また、家屋を取り壊してから売却の日まで敷地を賃貸に出したり駐車場として使ったりすると特例の対象外になります。
実家を売却する可能性があるのであれば、少なくとも3年間は空き家になっても残しておいたほうが良いでしょう。
● 所有期間が10年超であれば軽減税率の適用がある
さらに、居住用不動産の特例の条件を満たした上、譲渡した年の1月1日において所有期間が10年超であれば軽減税率の特例の適用を受けることができます。
課税譲渡所得が6,000万円以下 | 課税譲渡所得が6,000万円超 |
---|---|
14.21% | 20.315% |
所有期間10年超の軽減税率の特例は、3,000万円の特別控除の特例と併用して利用することができます。
● 所有期間30年(住まなくなってから1年)の実家を3,000万円で売却した場合の譲渡所得税
上記の例と同じ条件で、居住用財産の特例を満たす場合で計算します。
課税所得=3,000万円-300万円-3000万円
所有期間30年なので、6,000万円までの税率は14.21%
譲渡所得税=0万円×14.21%=0万円
このように、課税所得が3,000万円以下であれば税金を納める必要がなくなります。
まとめ
親の生存中に空き家になった実家を売却するポイントは、住まなくなってから3年以内に、売却価格3,000万円以内で売却することです。
実家の売却となると気持ちの問題もありますが、上記の条件も満たせば固定資産税や維持管理コストのかかる実家を、税金の負担0で売却することができます。是非参考にしてみてください。