ママさん必見!両親の近所に住む「近居」が人気
2016.06.03「住居のかたち」「住み方」には、決まりきった正解はありません。100人いれば100通りの住み方があります。
自分の両親と住むのか、夫婦2人だけで住むのか、核家族として住むのか、恋人と同棲するのか、友だちとルームシェアするのか。さまざまな住み方があります。
ただ、今回はそのなかでも「親との近居」に注目してみましょう。親と同居するのでもなければ、飛行機でなければ行けないところに住むわけでもない……。新しい住み方である「近居」についてご紹介します。
近居とは
近居とは「親世帯と子供世帯が同じ生活圏内に住んでいる住居形態」のことです。
この近居には、大きな特徴があります。それが、「同じ生活圏内に住んではいるものの、『同居』ではないこと」です。「結婚した子世帯と親が同じ生活圏内に住んでいる」というと、「同居」をイメージする人も多いでしょう。
しかし近居の場合は、同居ではありません。「敷地内に2軒の家が建っている」敷地内別居でもなく、家(世帯)としては完全に独立しています。そのため、「最寄りの駅も最寄りのスーパーも同じだけれど、片方はマンション、片方は一戸建てに住んでいて、1週間以上顔を合せないことも珍しくない」といった状況もできあがります。
この近居という形態は、現在非常に増えています。平成20年から平成25年の間に、近居をしている人の割合はちょうど2倍になっています。
また、「現在はまだ別居をしているけれども、近々近居に切り替えるつもりだ」と答えている人も多いです。平成30年ごろには、平成20年のときの3倍以上の数字になるという見方もあります。
政府の支援がスタート
また、非常に面白いことに、政府もこの「近居」を積極的に進めていく方針です。内閣府が平成18年の6月に、「少子化対策会議決定」において、「新しい少子化対策について」をまとめました。
このなかでは、「子育てをしやすい住宅を、低料金で使ったり、安い費用で買ったりすることができるように、政府が支援すること」が盛り込まれています。また、さらに、「三世代同居を推進する」という文言もあります。
近居もまた、同じところで触れられています。三世代同居と同じように、「望ましいかたち」として、支援・推進することとなっているのです。これは、「家族に多様性を持たせることができる」というのが一つの理由になっています。
出展:内閣府ホームページ
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/measures/19html/taisakuan.html
これを受けて、さまざまな都道府県で取り組みが始まっています
たとえば、倍率の高い県営住宅において、近居を希望する場合は特別な募集枠が設けられています。また、近居をすることによってポイント(商品との交換が可能)をためることができるようになっていたり、補助金として50万円を支給したりすることができます。
これらは自治体によってやり方に違いがありますが、いずれも極めて有用なものであることはまちがいありません。
近居生活のメリットは?
近居生活は、政府からの支援が受けられるだけでなく、生活面においても、さまざまなメリットがあります。
●子どもの面倒をお願いできる
現在、保育園の待機児童が問題になっていることは、あまりにも有名です。ライフスタイルは人によって違いがありますが、「働きたくても預ける先がない」「自分病気になったときに、いつも預け先に苦慮している」と困る人にとって、周囲に両親が住んでいる、というのはとても心強いことでしょう。
自分、配偶者、自分の父親、自分の母親。子どもの面倒を見ることができる人間がたくさんいるため、融通を利かせやすいのです。選択肢が多ければ多いほど、生活は潤います。
●親が倒れたそのときに
加えて、親世代にもメリットがあります。親の介護義務は実子にあります。「施設のあきを待っている間は、自分たちで介護する」という場合、近場に住んでいることは大きな強みになります。基本の介護はプロに任せていても、ちょっとした隙間時間に顔を見せることもできますし、何かあったときでもすぐに対応することができます。
●プライバシーの確保と資産運用
近居生活は、このように、「近場にいるメリット」を最大限活用することができます。しかし同居の場合とは違い、プライバシー性はきちんと保たれます。家が大きくなりすぎないので、家を貸家にしたり、売ったりしやすいというのもメリットです。
両親との適切な距離感について
このように、何かとメリットが多い「近居」ですが、そうであるがゆえの「取り決め」も必要になります。それぞれで考え方は違いますが、結婚して所帯を持つということは、「一つの別個の家庭として生活を営んでいくこと」が原則となります。
「近いから」という理由で、常に子どもを預けていたり、週に5日間もお互いの家に入り浸ったりするようでは、それは「同居」という形に近くなってしまいます。もちろんお互いで納得と合意ができていれば良いのですが、誰かが「同居」を嫌がっていた場合、それは多大なストレスになってしまうでしょう。
そのため、ある程度適切な距離感を持つことが重要です。夕食を一緒に食べるのは月に2回、子どもを預けるのは(原則として)火曜日と木曜日などです。
また、近居をしている親世帯とは、物理的にも精神的にも距離感が近くなります。しかし、配偶者にも親世帯がいる、という前提を忘れてはいけません。お盆や盆暮れ正月などの長期休暇のときは、意識して、もう片方の親の住まいお墓を訪れるようにするとちょうどよいでしょう。
まとめ
近居は、「近場に親世帯が住む」というかたちを指します。この近居は年々増加傾向にあり、政府も積極的に支援を行っています。
近居の場合、親に子どもの面倒をみてもらったり、親の面倒をみやすかったりといったメリットがあります。また、同居とは違い、ある程度のプライバシー性が確保されており、資産運用も容易です。
このように、メリットが多い近居ですが、「適切な距離」を保てず、誰かが不満を抱えてしまうこともあります。ある程度の約束事を設けることは必要です。また、近居に住んでいない方の親への「ご機嫌伺い」もお忘れなく。不公平感の解消に努めましょう。