転勤によって、持ち家の住宅ローン減税制度が受けられないケースとは
2017.10.30住宅ローンを組んで住宅を購入した人は、一定の条件を満たすことで所得税や住民税の一部が還付される「住宅ローン減税」の対象となります。年間最大40万円の控除が10年間受けられるので、非常にメリットの大きな制度です。
実は、転勤によって持ち家の住宅ローン減税制度が途中で受けられなくなるケースもあることをご存じでしょうか?詳しくご紹介していきます。
住宅ローン減税の適用要件
「住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)」の適用要件の一つに、「住宅ローン等を利用して居住用家屋の新築若しくは取得又は増改築等(以下「住宅の取得等」といいます。)をした日から6か月以内にその者の居住の用に供し、かつ、その年の12月31日まで引き続きその者の居住の用に供していること」というものがあります。つまり、住宅を手に入れてから半年以内に住み始め、住宅ローン減税を適用する年の年末まで住み続けていなければならないということです。
転勤になるとこの要件が満たせなくなるため、原則として住宅ローン減税が受けられなくなってしまいます。ただし、一部の要件を満たせば継続して適用が受けられます。
家族全員で引っ越す場合
家族全員で転勤先に引っ越す場合、その年から住宅ローン減税は受けられなくなります。しかし、次の要件をすべて満たした場合、転勤先から帰ってきた時点で再び適用が受けられます。
- 勤務先から転勤を命じられたこと(もしくはそれに準ずる止むを得ない事情があること)
- 引っ越し前に一定の手続きを行っていること
勤務先からの命令ではなく、自己都合による退職や転勤の場合は適用が認められません。引っ越し前に、税務署に対して忘れずに「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を提出しておく必要があります。必要書類や記入事項など、詳しくは最寄りの税務署にご確認ください。
住宅ローン減税の適用期間は入居から10年間です。転勤先での期間が繰り延べ適用されることはありません。たとえば、入居から2年後に転勤し5年して戻ってきた場合、残りの適用可能期間は3年間です。この点に注意してください。
また、その物件を賃貸に出していた場合、その年は自宅に戻ってきても控除が受けられません。再適用が受けられるのは、翌年からになります。
住宅を手に入れて一度も入居していない場合、家族で引っ越して戻ってきて再入居したとしても住宅ローン減税の適用は受けられません。
単身赴任の場合
住宅ローンを組んだ本人が単身赴任した場合でも、残された家族が入居要件(住宅を手に入れてから半年以内に住み始め、住宅ローン減税を適用する年の年末まで住み続けている)を満たせば住宅ローン減税の適用が受けられます。
いったんは家族全員で引っ越したものの、本人を残して家族が戻ってきた場合も再入居として扱われます。つまり、再び控除の適用が受けられるわけです。引っ越しの回数や期間には特別な制限がありません。短期間で転勤を繰り返すような会社であっても、要件を満たしていれば再適用が可能です。
●海外への単身赴任だと適用されない場合も
単身赴任を選択しても、赴任先が海外だと転勤中の住宅ローン減税適用は認められません。転勤中の本人が、所得税法における「非居住者」とみなされるためです。もちろん、家族で引っ越していても適用外となります。
一度でも本人が入居していれば、海外から国内に戻ってきた時点で適用期間が残っていた場合に限り、適用が受けられます。海外赴任の場合は住宅を手に入れて6か月以内に本人が入居した実績がなければ、再入居したとしても適用は受けられません。
転勤先が国内 | 転勤先が海外 | ||||
---|---|---|---|---|---|
転勤中 | 再入居後 | 転勤中 | 再入居後 | ||
単身赴任 | 適用期間中に転勤 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
入居した年の年末までに転勤 | 〇 | 〇 | × | 〇 | |
本人が一度も入居せず家族のみ入居して転勤 | 〇 | 〇 | × | × | |
家族で 引っ越し |
適用期間中に転勤 | × | 〇 | × | 〇 |
入居した年の年末までに転勤 | × | 〇 | × | 〇 | |
本人が一度も入居せず家族のみ入居して転勤 | × | × | × | × |
まとめ
住宅ローン減税は年間最大40万円もの税額控除が受けられるので、家計に大きく影響する制度です。適用が受けられるかどうかで資金計画も変わってくるため、転勤が決まった場合はこれらも考えて持ち家の処分方法を検討しましょう。
単身赴任を選択すれば控除が無駄なく受けられますが、転居先の家賃や水道光熱費、帰省費などの出費がかさんで経済的負担が大きくなることも。不動産としての価値が落ちる前に、売却することも検討しましょう。
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