親子間売買では、みなし贈与に注意しましょう!
2018.11.22親子間売買をする場合は、「みなし贈与」にならないように細心の注意を払いましょう。住宅の売買が税務署から贈与とみなされれば、高額な贈与税の納税通知がやってきます。今回は、親子間売買で損を避けるために知っておくべき、みなし贈与について解説します。
みなし贈与とは
●「贈与」と「みなし贈与」の違い
みなし贈与について説明する前に、まずは贈与税の仕組みを簡単に説明しましょう。贈与税とは、他人から現金や不動産をはじめとする資産をもらったとき、その得をした部分に対してかかる税金です。
たとえば、現金で1,000万円もらえば、1,000万円の贈与に対して贈与税がかかります。不動産のような現金以外の資産なら、「現金換算するといくらになるのか」を調べて、その金額に税率を適用するわけです。
自分の持ち物を他人に渡す方法は、「売買」「贈与」「相続」の3つしかありません。
住宅を取引する際、両者が「これをあげます」「もらいました」という意思表示をしていると贈与になります。家とお金を交換していれば売買になりますし、所有者の死後家をもらった場合は相続です。しかし、本人同士は売買契約を結んで売買をしたつもりなのに、税務署に贈与とみなされてしまう場合があります。
贈与したことを両者がわかっているのが「贈与」で、贈与したつもりがないのに贈与として扱われ、贈与税の課税対象になってしまうのが「みなし贈与」なのです。
●親子間売買がみなし贈与になると高額な贈与税がかかる
親子間売買がみなし贈与になると、高額な贈与税がかかってしまいます。
例として、3,000万円の不動産を親子で売買する際、1,000万円に値引きして取引すると贈与税がいくらかかるか計算してみましょう。
親子間で行われた贈与税の計算式は、
- (贈与された財産の額‐基礎控除110万円)×贈与税率‐控除
です。 この場合、適正価格3,000万円との差額である、2,000万円を贈与したとみなされます。贈与された財産が3,000万円以下の場合、税率は45%、控除が265万円なので、
- (2,000万円‐110万円)×45%‐265万円=515万7,500円
の贈与税がかかる計算です。みなし贈与になると、不動産の売買で大きく損をしてしまいます。
みなし贈与にならない売却額の決め方とは
親子間売買をみなし贈与とするか、通常の不動産売買とするかを判断するのは税務署です。一般的には、市場価格よりも明らかに安く売買するとみなし贈与になります。しかし、判断基準は非公開。「○万円までなら絶対にみなし贈与にはならない」という正解はありません。
ただ、ひとつの基準として利用できるのが、みなし贈与に関する裁判の判例(判例タイムズ社より:東京地裁平19.8.23判決: http://www.hanta.co.jp/books/3589/)です。おおまかに説明すると、親子で土地を売買する際、相続税評価額(路線価:市場価値の約78%)で売ったのはみなし贈与なのでは、という問題を争いました。
判決は、「贈与にはあたらない」というもの。とはいえ、時価や路線価もある程度変動するため、時価の80%くらいだったら大丈夫と断言できるわけではありません。
市場価格より安く親子間売買する場合におすすめしたいのが、できるだけ複数の評価基準を用意して、売却価格の根拠を増やすことです。
- 固定資産税評価額
- 路線価
- 不動産鑑定士に依頼して求めた住宅の資産価値
などを参考にしましょう。ただ、不動産鑑定士へ住宅の評価を依頼するとお金がかかりますし、結局は税務署の判断次第です。ギリギリを攻めた結果、みなし贈与になっては意味がありません。
親子間売買では、売買する住宅がある地域の取引事例をたくさん知っている不動産会社を頼り、時価・市場価格に合わせましょう。
親子間売買ではここに注意!
不当に安く不動産を売買すると、赤の他人同士の売買であってもみなし贈与になります。ただ、親子だと金額設定があいまいになりがちですし、売り主と買い主の名字が同じことが多くてわかりやすいといった事情から、親子間売買は目をつけられやすいです。
みなし贈与にならないように親子間売買をするためには、どういう点に気をつければ良いのでしょうか。
●親子間売買は不動産会社経由で取引する
親子間売買は、必ず不動産会社に仲介をしてもらいましょう。親子だからと個人で取引をした場合、
- どうしてこの金額で売買したのか
- その基準は本当に正しいのか
- 実際に金銭のやり取りをしているのか
といった部分があいまいになりやすいからです。また、自分たちで売買契約書を用意した場合、書類にミスがある可能性もあります。第三者同士の売買なら、お互いが損をしないよう、取引後トラブルにならないように書類を準備するのが当たり前です。親子間売買では、第三者同士の売買と同等以上に売買取引の形式を整えましょう。
まとめ
親子間売買がみなし贈与になると、多額の贈与税がかかってしまいます。みなし贈与にならないよう、地域の不動産会社を頼って取引情報から適正な売買価格を決め、売買契約書等の書類もしっかり整えましょう。 不動産売買でお悩みの際は、ぜひ当店にご相談ください。