住宅売却&同居で相続税を節税できる「小規模宅地等の特例」とは
2018.11.26「小規模宅地等の特例」を使うと、相続税を大幅に圧縮できます。ただし、小規模宅地等の特例には適用条件があり、条件をクリアしていないと節税対策としては使えません。さらに、平成30年の税制改正によって利用条件が厳しくなっています。
今後の相続に備えて、制度の内容を知っておきましょう。
小規模宅地等の特例とは
まずは、小規模宅地等の特例とは一体どういうものなのかを解説していきます。
●相続する土地の価格が330平方メートルまで80%オフになる
小規模宅地等の特例とは、相続する土地の資産価値を、最大80%も割引できる減税の特例です。
不動産を相続する場合、不動産の資産価値に応じて相続税がかかります。ただ、土地や建物は現金ではないため、まず「現金で換算するといくらなのか」を計算しなければなりません。
このとき、建物に関しては固定資産税評価額(時価の大体7割程度)を当てはめるだけなので、計算は簡単です。2,000万円で建てた家は、1,400万円の資産として税額計算が行われます。
一方、面倒なのが土地の価値計算です。土地の場合、固定資産税評価額を使うか、または路線価というものを使って価値計算を行います。路線価は、「道路に接する土地1メートルあたりの単価」です。路線価が20万円で、土地の面積が200平方メートルであれば、ざっくり計算してその土地は4,000万円の価値があることになります。
このように、一戸建ての土地は建物よりも資産価値が高くなりやすいです。広い土地をそのまま相続すると、莫大な相続税がかかってしまうでしょう。しかし、現金等の資産をたくさん持っているわけではなく、資産といえば持ち家くらいしかないというご家庭も少なくありません。
相続税は税金なので、原則現金での一括払いです。こうしたご家庭に対して莫大な課税を行うと、相続税を納めるために住んでいる家を手放すことになってしまいます。そんなことになったら、国民は次々と破産してしまうでしょう。
そういった事情からつくられたのが、故人と同居していたり今後その家に住んだりする予定がある場合に、一定面積の土地を80%オフにできる「小規模宅地等の特例」なのです。先程の例でいえば、4,000万円の土地を800万円の資産として相続できます。
相続税額は「相続税の課税金額×税率」で求めるため、そもそもの資産価値が割引されれば、大きく節税できるのです。
●小規模宅地等の特例の利用条件
小規模宅地等の特例は、節税効果が非常に高いため、利用条件も厳しく定められています。
・故人が住んでいた持ち家であること
・面積は最大で330平方メートル(100坪)まで
が、基本的な利用条件です。親名義の持ち家をそのままにして、介護のために親を引き取り同居した場合、小規模宅地等の特例は使えません。
また、故人が亡くなる3年前までに贈与された財産は、通常遺産の一部として相続税の課税対象になります。しかし、3年以内に生前贈与で持ち家を手に入れた場合や、「相続時精算課税」による贈与を受けた場合も、小規模宅地等の特例は使えません。
●小規模宅地等の特例を利用できる人
小規模宅地等の特例を使えるのは、
- 配偶者(亡くなった人の妻もしくは夫)
- 同居していた親族
- 3年以上別居している親族
だけとなっています。配偶者に関しては、基本的に無条件で小規模宅地等の特例を利用可能です。同居している親族は、
- 本当に同居している(住民票を実家の住所に移しただけなどはNG)
- 同じ財布で生活している(別会計で生活しているとNG)
という制限があるので、注意しましょう。
また、平成30年の税制改正によって、「別居の親族」に対する利用条件が厳しくなりました。
どれくらい厳しくなったかというと、
- 3年以上別居している
- 配偶者や同居の親族がいない
- 自分の持ち家に住んでいない
という条件に加えて、
- 他人名義の持ち家に住んでいる人もNG(親名義、結婚している配偶者名義、社宅や社員寮もダメ)
- 過去に一度でも持ち家に住んでいるとダメ
なのです。これまで一度も持ち家や社員寮等に住んだことがなく、別居で、故人に配偶者や同居の親族がいない場合のみ利用できます。
自宅を売却して同居すれば相続税を大幅に節税できる
故人の配偶者は、無条件で小規模宅地等の特例を利用できるため、特別節税を意識する必要はないでしょう。逆に、別居の親族は利用条件がかなり厳しくなっているため、別居状態のまま持ち家を相続するのはおすすめできません。
そこでおすすめしたいのが、自宅を売却してご両親と同居するという方法です。自分名義の家を手放して親名義の家に同居すると、小規模宅地等の特例を利用できます。同居を機に建て替えやリフォームをすれば、新築同然になるため住みづらさもありません。
まとめ
親が持ち家を持っている場合、小規模宅地等の特例を使って節税するのがおすすめです。ただ、別居のままこの特例を使うのは非常に難しいため、自分の持ち家を売って親と同居しましょう。
住宅の売却や建て替えなど、不動産に関するお悩みがあれば、ぜひご相談ください。