不動産売却時の譲渡所得税を節税しよう!取得費の計算方法と注意点
2019.05.31日本の税制は自己申告制なので、税に関する知識を持っていれば節税できる場面が多いです。
不動産売却で利益が出た場合は「取得費」を適切に積み上げて、不動産売却の利益に対してかかる税金、譲渡所得税を節税しましょう。
今回は、不動産の売却時にかかる譲渡所得税とはそもそもどういうものなのか、どのような費用を取得費として処理できるのか、取得費の計算方法などについて解説します。
不動産売却時にかかる譲渡所得税とは
●譲渡所得税:不動産を売って利益が出たら納める税金
譲渡所得税とは、自身の所有している不動産を売って、利益が出たときに納める税金のことです。
不動産の売却額から「取得費」などの必要経費を差し引き、残った「譲渡所得」に対して一定の税率をかけることで納税額を求めます。
なお、日本の税制度は自己申告方式です。家を売って手に入れた利益や納税額は、自分の手で計算して確定申告をする必要があるので、注意しましょう。
●譲渡所得税の計算式
譲渡所得税の納税額は、以下の式で計算可能です。
- (売却した不動産の代金-取得費-譲渡費用-特別控除)×15%または30%
カッコでくくった部分で求める金額のことを、「譲渡所得」とよびます。
家を高く売ったとしても、取得費や譲渡費用、特別控除を積み上げて譲渡所得を減らせば、節税できるというわけです。
ここでは、取得費・譲渡費用・特別控除のなかでも取得費を使って譲渡所得を削るための知識をご紹介します。
取得費になるもの・ならないもの
取得費とは、売却した家を手に入れるときにかかった費用のことで、いわゆる「仕入れ値」にあたります。
ただ、どのような費用でも好きなだけ取得費にできるわけではありません。取得費にできるものは、以下の通りです。
- 手放した土地・建物の購入費用と建築費用
- 売った家を買うときに不動産会社へ支払った仲介手数料
- 中古物件のリフォーム費用
- 不動産購入時に納めた登録免許税・不動産取得税・印紙税・登記の費用
- 借地や借家を購入するときに支払った立ち退き料
- 住宅建設を目的とした整地にかかった費用
- 土地の形や広さを確定させるために行った測量費
- 法律トラブルになっている土地を購入した場合に使った訴訟費用
取得費の大部分は特殊な費用なので、使用できる人は限られます。
多くの場合、土地や家の購入費用や諸手数料を取得費として利用することになるでしょう。
ただし、建物は老朽化するので、購入時の金額ではなく経年劣化分を差し引く必要があります。
節税に役立つ取得費の計算方法
●不動産の購入時にかかった実費はそのまま取得費にできる
取得費にできるのは、家を買うときにかかった実費です。
そのため、「何となくこれくらい払った」というどんぶり勘定で取得費を計算しても、税務署に認めてもらえません。客観的に取得費を証明できるように、譲渡所得税の申告をするときは売買契約書や納税の証明書、領収書といった証拠書類を用意しましょう。
証拠書類さえあれば、取得費を一つひとつ足して総額を求めるだけです。
●取得費がわからない場合は「概算取得費」を利用する
古い住宅で領収書等がどこにあるかわからないといった場合は、「概算取得費」を利用できます。
概算取得費とは、「取得費がわからないとき、売却代金の5%を取得費にしても良い」という特別ルールのこと。
仮に、不動産を1,000万円で売却した場合の概算取得費は、
- 1,000万円×5%=50万円
です。
取得費を計算する際の注意点
●事業用の物件と自宅で減価償却費の扱いが変わる
譲渡所得税の計算では、不動産の購入費用から経年劣化に当たる「減価償却費」等を差し引いた余りを取得費にします。
減価償却費が少なければ少ないほど取得費が大きくなるため、節税を考えるなら減価償却費は低い方が好ましいです。
ただ、不動産の減価償却費は、「事業用の物件かどうか」で若干計算のやり方が変わります。
自宅の減価償却費を事業用の計算式で求めると、取得費が減って損をしまうので、計算するときは両者を混同しないように気をつけましょう。
●事業用の物件だと印紙税・不動産取得税・登録免許税を取得費にできない
事業用の物件は、不動産購入時に払った印紙税や不動産取得税、登録免許税を取得費にできません。
なぜかというと、印紙税・不動産取得税・登録免許税は家賃収入に対する必要経費にできるからです。
一度事業の経費として処理したお金を、譲渡所得税の取得費として認めてしまうと、事業用の物件を売る人は二重に節税できることになります。
自宅を売る人が損をしてしまうため、事業用物件の印紙税等は取得費としてカウントできないように制限されているのです。
まとめ
取得費の計算方法や注意点を知っていると、譲渡所得税を節税できます。
ただ、古い物件の場合、実費よりも概算取得費を使ったほうがお得になる場合も少なくありません。
取得費をどう計算すれば一番お得に節税できるのか、実際に計算して確定申告の準備を整えましょう。
ただし、減価償却費など計算が難しい部分もあるため、わからないことがあればぜひ一度、当店にご相談ください。