宅建業法の規定から法令違反まで!契約書が無効・解除になる条件とは
2019.12.24売買契約書の内容によっては、「法令違反」等の理由で売買契約そのものが無効になったり、買い主から契約解除を求められたりしてしまいます。不動産売却のような大きな取引では、お互いの署名・捺印をした契約書の内容がすべてです。せっかく売却手続きがうまくいっていても、中身に問題があるとスムーズに取引を終わらせられません。
そこで今回は、売り主としてトラブルを予防するために知っておきたい、売買契約書の無効・解除条件について解説していきます。
売買契約書の内容が無効・解除になる条件は原則6種類
●手付解除
手付解除とは、売買契約を結んだときに買い主から支払われる手付金に関する契約解除の条件です。
- 売り主から契約を解除する場合は手付金を2倍支払う
- 買い主から契約を解除する際は手付金をそのまま売り主に渡す
という内容の項目を契約書内に入れておけば、特に理由がなくても契約を解除できます。
●売買契約後の危険負担
売買契約書を交わしてから火事で売却予定の物件が燃えてしまったり、地震や台風、津波等で住まいが損傷したりした場合、買い主側から売買契約の解除を請求可能です。
ただし、基本的には売り主側が危険負担を負い、責任を持って修理できる場合は、当初の契約通り不動産売却手続きを進めます。
危険負担はもともと民法の規定で、2020年4月以降に法改正で内容が変更されるので、不動産を売る時期によっては契約書の書き直しを検討しましょう。
●契約違反
売買契約書で、契約違反時のルールとして契約解除できるようにしていれば、売り主または買い主から契約の解除を要求できます。
また、相手側が何らかの契約違反をした場合、違約金を求めるためにも契約違反に関する項目が必要です。
相手側に重大な過失があるときは、交渉をせずに契約を白紙に戻したほうが金銭的・時間的ダメージを受けずにすむことも少なくありません。
問題のある取引相手を避けるためにも、契約違反の項目は作り込みが重要です。
●個別に設定した特約
「買い主が住宅ローン審査に落ちた場合は契約解除できる」
といった特約を個別に設定している場合も、売買契約書の内容に従って契約を解除できます。
基本的には、買い主側の取引リスクを抑えて売買の交渉をうまく運ぶための特約が多いです。
売り主・買い主の事情に合わせてどういった特約を設定するか吟味する必要があるため、特約の内容は信頼できる不動産業者と相談して決めましょう。
●借地権売却において地主の同意を取っていない
借地に建てた物件を地主の同意なしで売却しようとした場合、売却後に売買契約が無効になったり、解除を求められたりします。
そもそも、法律の関係上、借地の物件は地主の同意なしで売却できません。
借地権契約は、あくまでも地主と売り主との間で交わされた契約なので、たとえ地主に黙って不動産を売却できたとしても、地主は買い主へ「あなたに土地を貸す契約はしていないから出ていってほしい」と請求するでしょう。
とはいえ、土地も建物も売り主の所有物なら、借地権の譲渡に関する項目を作る必要はありません。不要な項目を増やしても契約書を見づらくするだけなので、必要ない場合は売買契約書から削除しておくと良いでしょう。
●瑕疵担保責任の告知義務違反
瑕疵担保責任の告知義務違反をしている取引は、売買後に買い主から損害賠償請求や売買契約の撤回を求められる可能性が高いです。
宅地建物取引業法では、物件の瑕疵(シロアリ被害などの重大な問題点や欠点のこと)がある場合、不動産業者から買い主へ告知することを義務付けています。
トラブルに備えて告知義務違反を理由に買い主から契約の解除を求められたら、売り主は拒否できません。
特約の設定や法令違反など!宅建業法以外の契約無効・解除の条件
「買い主側に不利な契約内容」を盛り込むと、消費者契約法違反になって売買契約そのものが無効になってしまいます。
また、契約書内で違約金を相場より高い額(相場は物件価格の10%から20%程度)にした場合、民法における「公序良俗に反する契約」とみなされ、契約が無効になってしまう場合もあるので気をつけましょう。
他に、反社会勢力の関与を排除する特約を売買契約書に盛り込むケースも増えています。
特約を作っていないと、いざ売買相手が反社会勢力の関係者だと分かったとき、スムーズに契約の撤回や解除を求められません。ただでさえトラブルになりやすい相手なので、自衛のためにも常に最新の売買契約書事情をチェックすることをおすすめします。
まとめ
売買契約は、契約書の内容次第で契約そのものが無効になったり、解除したりする場合があります。
契約の無効・解除の条件を知っていれば、トラブルになったときいち早く対処できますし、相手側から不当な契約解除を求められても慌てる必要がありません。
ただし、法改正や社会情勢によって、契約書内の特約は変わることもあります。
ひな形を使っていれば何が起きても大丈夫というわけではないため、不動産を売却するときは売り主も積極的に契約書の内容を確かめましょう。