売却するには許可が必要!?農地の売却方法や注意点を解説
2020.02.04
「実家の農業を畳むことになった」
「親から農地を相続したが自分では農業を続けるつもりがない」
といった場合に必要なのが、農地の売却です。
ただし、国の食料自給率を左右する農地は、一般的な宅地に比べて自由に売却できないように制限がかけられています。
適切な売却方法を知らずに不動産会社を訪れると、スムーズに手放せない場合もあるので注意が必要です。
そこで今回は、農地の売却方法や、売却時の注意点について解説していきます。
農地の売却には制限がかけられている
●農地の売却には農業委員会による許可が必要
農地を売却する際に押さえておきたいのが、「売却の許可」に関する知識です。
農地を売却するときは、地域の「農業委員会」という組織から許可を得る必要があります。
農業委員会の許可がない状態だと、買い主を見つけていても売却手続きが取り消されてしまうため、必ず許可を取ってから売却手続きを進めましょう。
なお、農業委員会とは、農地に関するルールを定めた法律、「農地法」に従って各市町村に設置されている組織のことです。
農家に関する事務手続きは、原則すべて農業委員会に任されているため、農地を売却する場合も、宅地等に転用する場合も農業委員会に相談する必要があります。
●農地を売却できるのは農家または農家志望の買い主だけ
農地は、いわゆる一般人に売却できません。
なぜかというと、農地が減ると国の食料自給率も下がってしまうため。
食料自給率の維持は、国家の安定に欠かせない国策の一つです。
自由な売却を認めると、農家ではない人が農地を買い取り、アパートやマンションを建てたり、駐車場にしたりして次々と農地が減ってしまいます。
そのため、農地法では、「農地を売却できるのは原則農家だけ」と定められているのです。
現役の農家や、脱サラして農業一本で生活するための準備を整えている人、または農業法人しか取引相手にできないので、「一般的な土地とは売り方が違う」ことを覚えておきましょう。
なお、単純に買い主になれる人の数が少ないため、売却そのものも難しいです。
知っていると役立つ!農地の売却方法
●農地のまま農家に売る
農地の売却方法の中でも、手続き的に一番楽なのが農地のまま農家へ売却してしまうこと。
近隣の農家へ相談したり、農協経由で農地の買い主を探したりして、買い主を見つけられればいつでも売却できます。
農業委員会から取る売却の許可も、農家に売る場合はとくに問題にはなりません。
- 農地を拡大したい
- 新しい作物を育てたい
- 後継者を見つけたので試験農園として土地が欲しい
など、農地を広げたがっている農家とつながりを持てれば、スムーズに売却できるでしょう。
つながりのある相手なら、売却トラブルの心配が少ないというメリットもあります。
●農地を宅地等に転用して売却
ただ、都合良く近隣に農地を欲しがる農家がいるとは限りません。
また、農地とは離れた場所で暮らしているため、農地を欲しがりそうな相手の伝手がない場合もあるでしょう。
そんなときにおすすめしたいのが、農地を宅地等に転用してから売却するという方法です。
日本では、無計画な都市開発等を避けるため、土地の利用用途に合わせた「地目」を設定しています。
たとえば、「宅地」という地目の土地は、建物を建てて活用するための土地ですし、「田」や「畑」は農業をするための土地です。
基本的に、農地としてみなされている土地は、農業以外の目的で利用できません。
しかし、土地の地目を農地から宅地等に変更すれば、一般的な土地と同じように売却できます。
農地売却の注意点
●農地は一般的な宅地よりも売却額が安くなる
農地は、
・単純に買い主の数が少ない
・競争が起こりづらく需要も小さい
ため、同じ面積の宅地に比べてあまり高くは売れません。
●買い主が少ないため売却までにかかる時間も長い
近隣地域に農地を欲しがる人がいなければ、取引成立までに時間もかかります。
急いで農地を手放したいという事情があるなら、農地のまま売るのではなく、宅地に転用してから売却した方が良いでしょう。
●不動産会社によって仲介手数料が変わってくる
不動産売却を業者に頼んだ場合に支払う仲介手数料は、「宅地建物取引業法」という法律で定められた手数料です。
法律名を見ればわかる通り、仲介手数料は原則「宅地」の仲介時に必要な費用なので、「農地」の仲介をお願いする場合、不動産業者によって金額が変わります。
宅地建物取引業法の基準で金額計算をするのが一般的ですが、宅建業法の基準よりも高い手数料を請求される可能性もあるため、不動産業者選びは慎重に進めましょう。
まとめ
農地を売却する場合、農業委員会から許可を得る必要があります。
また、農地の売却相手は、基本的に現役農家や農業法人だけです。
地域に農地を欲しがる人がいないと、高額売却・短期売却は狙えません。
売却条件や求める結果によっては、農地を宅地に転用して売却する手続きも必要になってくるため、農地を手放すときは農地の扱いに慣れた不動産業者に相談しましょう。