不動産の売り主が知っておくべき売買契約の流れと注意点
2023.04.28不動産を口約束で売却すると、後々、トラブルに発展した際に証拠がないため、不動産売却では書面の売買契約が必要不可欠です。
ただ、売買契約とは何なのか、どういった書類が必要で、どのような流れで進んでいくのかを売り主が理解していないと、売却手続きをスムーズに進められません。
そこで今回は、不動産の売り主に知っておいて欲しい、売買契約の流れと注意点をお伝えします。
売買契約って何?
●不動産をいつ・いくらで誰に売るのか証明する書類
不動産売却の売買契約とは、不動産をいつ・いくらで誰に売るのかを証明するために作る契約のことです。
売り主と買い主双方の名前・住所・不動産の所在地・面積・価格・決済方法・引き渡し日など、売買契約書には非常に多くの項目を書き込みます。
土地だけを売却するのか、土地と建物がセットなのかなどによっても書類の形式が変わってくるため、契約している不動産業者にひな形を用意してもらい、内容を埋めていくのが一般的です。
●不動産を売るときに売買契約や売買契約書が必要な理由
不動産を売るときは、売買契約と売買契約の内容をまとめた売買契約書が必須となります。
なぜなら、口約束で不動産の売買について決めると、後日買い主と水掛け論になったとき、どちらの言い分が正しいのかを証明できないからです。
不動産売却では、普段扱わないような大金をやり取りします。
取引額が大きいと、トラブルが起きたときに売り主や買い主が受ける被害も大きくなってしまうので、誰が見ても契約内容がわかる契約書を作る必要があるのです。
また、宅地建物取引業法の第37条で、「不動産業者が不動産売買に関わる場合、契約内容を記した書面を交付すること」を義務付けられているという理由もあります。
法律を守り、不動産売却トラブルを未然に防ぐために、売買契約書があるのです。
一般的な売買契約の流れ
売り主側から見た不動産の売買契約は、以下のような流れで進んでいきます。
- 不動産を売り出す
- 広告を見た買い主から連絡を受け、価格交渉などを行う
- 売却価格や引き渡し日などを決める
- 不動産業者に協力してもらい、売り主側が売買契約書を作る
- 買い主に売買契約書を見せ、内容に問題がなければサインしてもらう
- 売買契約書で決めた引き渡し日に、代金を受け取って不動産を引き渡す
売買契約を交わすときは、買い主から売却価格の10%程度を手付金として払ってもらうのが一般的です。
売買契約の締結後、売り主側の事情でキャンセルすると、手付金を返すか手付金の倍額を買い主に支払う必要があります。
必ず売買契約書を読み込んだ上で、契約手続きに進みましょう。
売買契約を交わすときに必要な書類
不動産を売却する際、以下の書類が必要です。
- 土地や建物の登記済証または登記識別情報:不動産の所有者であることを証明する書類
- 測量図:不動産の正確な面積を記した書類
- 検査済証:建築基準法を守っていることを証明する書類
- 印鑑証明書:売買契約書に捺印する印鑑が売り主のものであることを示すための証明書
- 付帯設備表:住宅設備についてまとめた書類
- 収入印紙:売買契約書に貼り付ける、印紙税を納めるためのもの
- 身分証明書
登記識別情報や検査済証など、「不動産の購入時に渡された書類」は、売り主が事前に探しておく必要があります。
書類の準備が遅れると契約手続きも遅れてしまうため、早めに用意することを心がけましょう。
売買契約に関する注意点
●契約不適合責任を負う
2020年の民法改正により、不動産の売り主は、「引き渡した不動産と売買契約書の記載内容に違いがある場合、責任を負う」ことになっています。
書面の内容と不動産の実態が違う場合、例えば売買契約書に書いていなかった設備の破損があると、買い主から修理代や損害賠償を請求されるため、売買契約書を作るときは物件自体のチェックが不可欠です。
「雨漏りがあることを内覧で伝えており、口頭で直さなくて良いと買い主に言われた」といった場合でも、契約書に雨漏りのことを記載していないと、契約不適合責任を追求される可能性があります。
売買契約を結ぶときは、必ず取引に関する決まりごとのすべてを契約書に明記しましょう。
●解約条件等を契約書に書いておく必要がある
売買契約を交わすと、一方的なキャンセルはしづらくなります。
ただ、どういったときにキャンセルを認めるのか、どういった事情でのキャンセルなら罰則を付けるのかを書面で決めていないと、いざ売り主か買い主が契約を解除したいと思ったとき、トラブルになりやすいです。
解約条件や解約に関する特約も、契約書に盛り込んでおきましょう。
まとめ
不動産を売却するとき必要になるのが、売買契約と売買契約を書き起こした売買契約書です。
物件の引き渡し日や支払い条件など、取引に関する重要な事項を明記した売買契約書がない場合、不動産売却トラブルのリスクは跳ね上がってしまいます。
流し読みしていると、思わぬところでトラブルに巻き込まれてしまうため、不動産売却は、売買契約の中身を理解した上で手続きを進めましょう。