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不動産を安く売ったら税金が安くなる!?譲渡損失の特例とは

2023.05.17

不動産を安く売ったら税金が安くなる!?譲渡損失の特例とは

基本的に、不動産の売却価格が安くなればなるほど、売り主は損をします。

ただし、不動産を買ったときより安く手放し、金銭的には損をしてしまっても、譲渡損失の特例という制度を利用すれば、翌年以降の所得税・住民税が減るため損失をカバーできます。

この記事では、譲渡損失の特例という制度の仕組みや利用条件、特例を受ける際の注意点などを解説します。

譲渡損失の特例って何?

●譲渡損失って何?

譲渡損失とは、不動産を始めとした資産の売却によって生じる赤字のことです。
日本では、給与や資産の売却など何らかのかたちで収入を得た場合、利益に応じた税金を納めることになっています。
不動産の場合、売却価格ではなく、売却価格から不動産を買ったときに支払ったお金と、不動産売却の手数料を差し引いた「譲渡所得」が黒字なら、譲渡所得税の納税が必要になります。
逆に、不動産の売却価格から、不動産の購入費用や売却時の手数料を引くと赤字になってしまう場合、譲渡損失が発生しているため、「不動産を売ってお金を得たことに対する税金」はかかりません。
不動産を売って税金がかかるかどうかは、所得を計算するまでわからないため、不動産売却では以下の計算式を使って譲渡所得を求める必要があります。

  • 不動産の売却額-(取得費+譲渡費用)

●譲渡損失の特例について解説

譲渡損失の特例は、不動産を売って譲渡損失が出た場合、赤字分を翌年以降の所得から控除できるという節税制度のことです。
たとえば、年収500万円の方が持ち家を2,000万円で売却し、取得費・譲渡費用の合計額が2,100万円だったとします。
この場合、売り主は2,000万円の現金を手に入れていますが、譲渡所得は100万円のマイナスです。
不動産売却で損をしているにも関わらず、翌年は年収500万円に対する所得税や住民税が課税されます。

しかし、譲渡損失の特例を利用すれば、譲渡損失の100万円を給与所得から差し引き、「年収400万円に対する税金」にできるのです。
また、譲渡損失の金額が大きく、1年分の控除をしても余る場合、控除額の残りを最大3年間繰り越せます。
仮に1,500万円の譲渡損失が出たとしたら、3年間所得税や住民税が無税になるわけです。

不動産売却に譲渡損失の特例を利用するメリット

不動産売却に譲渡損失の特例を利用すると、「不動産が高く売れなかったらどうしよう」という不安がなくなります。
もし不動産の売却価格が思っていたよりも安かったり、不動産を売るために値引きすることになったりしても、納税額が減れば、トータルで損をせずに済むからです。
むしろ、譲渡損失の特例という制度を知っていれば、「不動産を早く売りたいから、あえて値引きする」という戦略も取れるようになります。

譲渡損失の特例を利用するための条件

●確定申告を行う

譲渡損失の特例を利用するためには、1年間の所得を翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署へ申告する手続き、確定申告が必須です。
確定申告をしなかった場合、譲渡損失の繰り越し控除はできません。
面倒だからと確定申告せずに特例を適用したいと考えても、節税にならないので、不動産売却と確定申告はセットで行う手続きだと考えておきましょう。

●特例の利用要件を満たしている

譲渡損失の特例を利用するための条件は、以下の通りです。

  • 譲渡損失があること
  • 売却する不動産がマイホームであること
  • 不動産を売った年の1月1日時点で所有期間が5年を越えていること
  • 不動産を買い替える場合は売却をした年の翌年12月31日までに新居を買うこと
  • 住宅ローン返済中で売却代金がローン残債を下回る場合、返済期間が10年以上残っていること

譲渡損失の特例には、「家を買い替えて損失が出るとき」のものと、「ローン返済中の家を売って損失が出るとき」のものがあります。
若干要件が異なるため、状況に応じてどの特例を利用できるのか確認した上で、確定申告を行いましょう。

譲渡損失の特例を使う際の注意点

譲渡損失の特例は、
・親子や兄弟など親しい間柄での売却で損失が出た
・その他不動産売却時に使える税の特例を直近2~3年以内に受けている
・家を出て3年以上経ってから不動産を売った
以上の場合、利用できないという注意点があります。

また、譲渡損失の特例を利用していても、控除期間中に年間の所得が3,000万円を超えると、その年は控除を受けられません。
税の特例は節税効果が非常に大きいため、条件が厳しいです。
利用するときは、不動産売却時に頼る業者や税理士等に相談し、ミスのない申告をして控除を受けましょう。

まとめ

不動産の売却価格が安くなっても、税の特例を使って翌年以降の納税額を減らせば、トータルの損失を圧縮できます。

ただし、譲渡損失の特例を利用するためには、不動産を売った翌年に確定申告を行い、特例の要件を満たしておく必要があるため、注意が必要です。

また、特例によって細かい要件も違います。
誰でも同じ特例が使えるわけではないので、自分に必要な節税制度を取捨選択できるように、不動産業者や税理士と相談しながら手続きを進めましょう。

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