不動産売却の節税対策!売却時の経費になるもの・ならないもの
2024.06.10
不動産を売却する際、売却益が出たら「譲渡所得税」という税金を納める必要があります。
譲渡所得税の税額計算は、「売却する不動産を買った時の経費」と「不動産を売る時にかかった経費」を盛り込むことで、節税可能です。
ただし、何が経費になり、何が経費にならないのかを把握しておかないと、適切な計算はできません。
そこでこの記事では、不動産売却時の節税対策として押さえておきたい、経費になるものとそうでないものの違いを解説します。
不動産売却後は利益に応じた税金がかかる
不動産を売って利益が出ると、利益に対する所得税と、住民税の納税が必要です。
給与に対する所得税や住民税と違って、不動産売却後の税金は、「不動産の売却価格-取得費-譲渡費用」で求めた譲渡所得に、一定の税率をかけて税額を計算します。
取得費・譲渡費用という経費を積み重ねると、譲渡所得が減って最終的な納税額も小さくなるため、不動産売却の節税対策では、「いかに経費を多く揃えるか」が重要なのです。
また、譲渡所得税は、「不動産の所有期間」によって税率が変わります。
「不動産を売った年の1月1日時点」で所有期間が5年以下なら短期譲渡所得、5年超だと長期譲渡所得の税率です。
譲渡所得税 | 住民税 | 合計 | |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 15.315% | 5% | 20.315% |
※復興特別所得税2.1%込みで計算
不動産売却後の税金は、不動産の所有期間が長く、経費が多ければ多いほど安くなります。
不動産の売却時に経費として認められるもの
●取得費
取得費は、不動産を買う時にかかった経費のことです。
不動産そのものの購入費用に加えて、購入時に負担した諸経費、具体的には以下のような費用を含みます。
- 仲介手数料
- 売買契約書に添付する収入印紙の購入費
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 不動産の登記手続きを司法書士に頼んだ場合の報酬
- リフォーム費用
ただし、建物は老朽化によって資産価値が落ちるため、たとえば20年前に購入した1,500万円相当の家を売る場合、20年分の価値を差し引く減価償却という手続きが必要です。
●譲渡費用
譲渡費用は、不動産を売る際にかかった各種費用のことを指します。
具体的に紹介すると、以下のような費用が譲渡費用です。
- 仲介手数料
- 売買契約書の印紙税
- 不動産を売るために行った測量・解体・補修等の費用
- 不動産の資産価値を調べるために実施した鑑定手続きの依頼料
- より高く買ってくれる相手へ売るため、途中まで進んでいた取引をキャンセルした場合の違約金
- 売買契約の契約時や物件の引き渡し時にかかった交通費
交通費や修繕費用なども、経費としてカウントされます。
売却時に経費として認められないもの
●取得費にならないもの
原則として、不動産を買うために必須だった費用以外は、取得費になりません。
たとえば、不動産を維持・管理に必要な固定資産税や、住宅ローン金利、入居後に支払った修繕費などは不動産を購入するための必要経費といえないので、取得費として反映しないよう注意しましょう。
また、不動産を買ったときに負担した引っ越し代や、団信の保険料・火災保険量なども対象外です。
●譲渡費用にならないもの
取得費と同じく、不動産を売るために必要だった出費以外は譲渡費用になりません。
不動産の売却に関係のないお金、たとえば家を売った後新居に引っ越すための費用や、売買契約・引き渡しとは異なる私的な目的で支払った交通費、売却後の譲渡所得税などは、譲渡費用の対象外です。
そのほか、遺産分割のために使ったお金や、住宅ローンの抵当権を抹消するための費用なども、譲渡費用になりません。
売却後の税金を抑えるためのポイント
●経費の証拠書類を揃えておく
経費を経費として認めてもらうためには、証拠が不可欠です。
不動産購入時・売却時に交わした売買契約書のコピーを始めとして、各種工事・支払いの領収書や契約書などが不足していると、税務署に経費を認めてもらえません。
また、不動産購入時の金額が分からない場合、概算取得費として「不動産売却価格の5%」を取得費にするというルールがあります。
多くの場合、概算取得費5%よりも実費の方が高額なので、証拠書類を集めておいた方が節税しやすいです。
●不動産の所有期間が5年を超えてから売る
不動産売却時の税金は、所有期間が5年を超え、長期譲渡所得で売った方が安くなります。
取得後5年以内で不動産を手放すと、税率の高い短期譲渡所得で売ることになるため、できれば長期譲渡所得の条件を満たすまで売却を待ちましょう。
事情があって不動産を少しでも早く売却する場合は、経費を積み上げたり、譲渡所得を減らせる税の特例控除を使ったりするのも効果的です。
まとめ
不動産の購入・売却にかかった経費を正確に把握し、適切に申告すれば、売却後の譲渡所得税や住民税を節税できます。
ただし、取得費や譲渡費用を申告するためには、経費になるもの・ならないものの切り分けと証拠書類の準備が必要不可欠です。
経費の準備をしつつ、譲渡所得税の税率が下がるまで売却をまったり、節税の特例を活用したりして、納税負担を抑えましょう。