既存不適格物件を売却する際の注意点と売却戦略
2024.07.16
不動産業界には、売却難易度の高い物件がいくつか存在します。
法改正によって現行法の基準をクリアできなくなってしまった建物、既存不適格物件もその一つ。
既存不適格物件は取り扱いの難しい不動産なので、売却する場合はいくつかのポイントを押さえておきましょう。
今回は、既存不適格物件の定義から売却時の注意点まで、解説していきます。
既存不適格物件って何?
既存不適格物件とは、建築当時の建築基準法や都市計画法、自治体の条例などを守って建てられたにも関わらず、法改正によって現行の法律や条例を守れなくなってしまった建物のことです。
なお、既存不適格物件と違法建築は、全くの別物。
日本では、法律が改正されたり新しくできたりした場合、法律ができる前に行われた法律違反は処罰の対象にならないというルール、「法令不遡及の原則」を採用しています。
既存不適格物件は、法改正によって法律に反した状態になっているだけで、建築された時点で法律を守っていない違法建築とは違うため、ただ持っているだけ、住んでいるだけなら問題になりません。
ただし、建物の建て替えや大規模なリフォームをする場合、を現行法の基準をクリアする必要があります。
建て替えやリフォームを自由にできないのは、買い主にとって非常に大きな問題です。
そのため、既存不適格物件の売却は、事前に売却計画を立て、慎重に進めていく必要があります。
既存不適格物件を売るのが難しい理由
●基本的に古い建物なので人気がない
既存不適格物件を売るのが難しい理由の一つが、古さです。
既存不適格物件は建築されてから長い時間が経過しているため、古い建材・古い間取り・古い技術で建てられています。
当然ながら、断熱性や気密性、耐震性なども低いですし、経年劣化も進んでいるため、現行の住宅に比べて住みやすいとはいえません。
耐震性を始めとした住宅の基礎性能は、底上げする場合高額な費用がかかります。
購入後にお金がかかったり、メンテナンスの頻度が新しい家よりも高かったりするので、既存不適格物件は不人気なのです。
●住宅ローンを利用するのが難しい
中古住宅のローン審査では、ローン申し込み者の年収や収入の安定性だけでなく、「住宅ローンで買う住宅が、いくらで売れるか」が重要になってきます。
既存不適格物件は、法律や築年数の関係上高く売るのが難しいので、担保としての評価が高くありません。
買い主が住宅ローンをなかなか組めないという点が、売却の難易度を高めています。
既存不適格物件の基本的な売却戦略
●修繕やリフォームをした上で売る
既存不適格物件の基本的な売却戦略が、修繕やリフォームをした上で売ることです。
現行の法律に合わせる必要のない小規模なリフォームをして内装をきれいにしたり、住宅設備を新しいものに入れ替えたりすれば、物件の魅力が上がります。
住宅の基礎部分に問題がない場合、内装を新しくするだけで快適に住めるため、相場に近い金額での売却も夢ではありません。
●訳あり物件としてそのまま売る
既存不適格物件のリフォーム等にお金をかける余裕がない場合、訳あり物件としてそのまま売るという手もあります。
そのまま売る方法のメリットは、売却準備にお金をかけなくて済むことです。
ただし、売却難易度が高いため、価格を下げたり、適切な広告を行ったり、訳あり物件の売却経験が豊富な不動産業者と契約したりする必要があります。
●建物を解体し更地として売却する
資金的に余裕がある場合は、既存不適格物件を解体し、更地として売却することも考えましょう。
既存不適格物件の問題は、建物部分にあります。
更地にすれば、法的な問題がなくなるため、一般的な宅地として相場で売却可能です。
古い建物は、建物部分にさほど価値がありません。
立地にもよりますが、多くの場合、更地にした方が最終的な売却価格は高くなります。
既存不適格物件を売る時の注意点
既存不適格物件を売るときの注意点は、買い主に対する告知義務があることです。
もし、既存不適格物件であることを隠して不動産を売却した場合、お金を受け取った後で買い主から訴えられる可能性があります。
不動産トラブルは、動かす金額が大きい分、トラブルになった場合の影響も大きいです。
買い主の恨みを買っても何ひとつメリットはないので、既存不適格物件を売る時は、必ず現行の法律に合わない部分や、住宅の問題点を買い主に共有しましょう。
また、適切な説明をするためには、物件の問題点を正確に把握する必要があります。
一般人だと問題を把握するのは困難なので、不動産業者に相談し、物件の現状や注意点を確認しましょう。
まとめ
法改正によって現行法の基準を満たせなくなった既存不適格物件は、建物が古く、法律上建て替えや大規模なリフォームが制限されるため、早期売却・高額売却が難しいです。
ただし、物件の問題点や市場価値を把握し、適切な売却戦略を取れば、相場に近い金額での売却も夢ではありません。
既存不適格物件の取り扱いに長けた不動産業者に協力してもらい、少しでも良い条件で売却できる方法を見つけましょう。