親子間で不動産を売却する際の手続きとトラブル回避法
2024.07.16相続や贈与の一環として、親子間で不動産を売却する場合、手続きそのものや価格設定を慎重に進める必要があります。
なぜなら、親族という親しい関係性での不動産売却は、一歩間違えると売買ではなく贈与になり、高額な贈与税が発生するからです。
今回は、親子間の不動産売却と一般的な不動産売却の違いから、親子間売却のメリット・デメリット、親子間で家や土地を売買する場合の注意点などを解説します。
親子間売却って何?
●親子間売却とは
親子間売却とは、文字通り親と子どもの間で行われる不動産売買のことです。
・相続対策として親の投資物件を子どもに売却する
・不動産の共有名義をまとめるため、親族間で持ち分を売買する
・資金援助目的で、ローンの残っている家を家族が買い取る
など、親子や兄弟といった親族間で不動産を融通する方法を指します。
基本的には、相続目的で不動産を生前に譲りたい、不動産の共有を解除したい、不動産の売買によって親族に資金援助したいといった状況で使われる手法です。
●一般的な不動産売却との違い
親子間売却と一般的な不動産売却の主な違いは、売却相手が家族であること。
一般的な不動産売却だと、売り主は「できるだけ高く売りたい」買い主は「少しでも安く買いたい」と考えるため、多くの場合交渉の末に相場に近い金額で成約します。
しかし、親子間の取引は、相場よりも安い金額で売却するケースが少なくありません。
市場価格を考えず、「親子だから相場よりも不動産を安く売る」ことを認めると、不動産の売却時や相続時にかかるはずだった税収が減ってしまいます。
親族間での理由なき値引きを認めると、公平な課税ができなくなってしまうため、親子間売却は取引内容の公正さを税務署から厳しくチェックされるのです。
親子間売却のメリット・デメリット
●メリット
親子間売却には、以下のようなメリットがあります。
・相続トラブルを予防できる
・取引条件を自由に決められる
条件によっては、生前に売却した不動産も相続税の対象ですが、あらかじめ親から子に不動産を売却しておくと、将来「誰がどの財産をどのように相続するのか」でトラブルになる可能性を下げられるのです。
また、親子間なら返済方法や返済の期間などを調整できるため、相手がお金に困っている場合、柔軟に援助できます。
●デメリット
一方、親子間売却のデメリットは以下の通りです。
・相場より安く売ると贈与税が課税されてしまう
・個人間売却だと、適切な契約書を作れないためトラブルになった時に面倒
・住宅ローンの利用が難しい
親子だからといって、絶対にトラブルにならないわけではありません。
個人間の取引だと、住宅ローンの利用も難しいため、基本的には不動産業者に頼んで正式な契約書や重要事項説明書を作ってもらいしょう。
親子間売却の流れ
親子間売却では、不動産業者の仲介で買い主を探す、というステップが不要です。
そのため、大まかに以下のような流れで手続きを進めていきます。
・不動産業者の査定で売却価格を調べる
・親子間で話し合い、売却条件を決める
・売買契約を結ぶ
・決済後に不動産の所有権を新しい所有者に移す
・所得税や贈与税の申告・納税をする
親子間売却で住宅ローンは利用できる?
親子間売却、特に不動産業者を介さない個人間の取引で不動産を売却する場合、多くの金融機関では住宅ローンを利用できません。
なぜなら、親族間の取引だと、書類上家を売買したことにして、住宅ローンで借りたお金を事業資金等に流用する可能性があるからです。
ただし、不動産業者に相談すれば、ローンを利用できる可能性があります。
不動産業者は、さまざまな金融機関と提携している他、金融機関との取引実績も持っています。住宅ローンは、不動産業者経由で申し込むと良いでしょう。
親子間売却で気を付けたいみなし贈与とは
みなし贈与とは、たとえば親子間で不動産を理由もなく安く売るなど、実質的に贈与とみなす取引をした場合、「相場との差額」に贈与税をかけるルールのことです。
名目上は不動産売却という形を取っていても、市場価格3,000万円の不動産を、親が子に300万円で売却した場合、2,700万円の贈与を行ったという扱いになります。
不動産の売却益に対してかかる税金、譲渡所得税の税率は15%または30%ですが、贈与税の税率は10~55%。
みなし贈与になると、譲渡所得税を節税する特例等も利用できないので、多くの場合納税負担が増えてしまいます。
みなし贈与を回避する方法は、不動産を適正価格で売ることです。
土地家屋調査士に不動産の価値算定をしてもらったり、複数の不動産業者に査定を取り、相場の価格で売却したりして、みなし贈与を防ぎましょう。
まとめ
親子間の不動産売却は、資産の移動や相続対策、家族間での資金援助として有効な手段ですが、住宅ローンを組むのが難しく、売却価格を相場より安くすると贈与税がかかるというデメリットも持っています。
安易に利用すると、トラブルになったり高額な贈与税が発生したりするリスクがあるため、親子間で不動産を売るときは、信頼できる不動産業者に相談し、適切な契約書を作って適正価格で売却しましょう。