引越をきっかけに空き家を売却

マイホームを住み替える等して、引越しをする場合、空き家となる予定のマイホームを先に売却するのか、住みながら売却するのか等いくつかの方法があります。これらの選択には全てメリットとデメリットがありますが、資金力があるかどうかによって取れる選択肢が変わります。

また空き家となる予定のマイホームを売却するだけでなく、賃貸に出す場合も含めて考え、それらのメリットとデメリットについても考えていきます。引越しをきっかけに空き家を売却する際、理想的な選択はどのような方法でしょうか?

理想の引越しのタイミングは?

マイホームを住み替える場合等、引越しでマイホームを空き家にする必要がある場合、引越しをいつにするのかは慎重に決める必要があります。この場合、選択肢としては以下の3つが考えられます。

  • 空き家となるマイホームを売却してから新居に引っ越す。
  • 新居に引っ越してから空き家となるマイホームを売却する。
  • 新たに賃貸に引っ越してから空き家となるマイホームを売却する。

それぞれにメリットとデメリットがありますが、資金力の有無で選べる内容が変わります。

<空き家となるマイホームを売却してから新居に引っ越す>

このパターンは空き家となる予定のマイホームを売却してから、新居に引っ越すパターンです。このパターンの良いところは、空き家となる予定のマイホームの売却価格を把握した上で新居の購入をするため全体の資金計画を組みやすいところにあります。

一方で、空き家となるマイホームに住みながら売却活動を行うため、週末の見学会のために毎週清掃や準備をしないといけないという点や、購入したい新居があったとしても、いつ売却できるかが不明確なため買い逃してしまう可能性があるというデメリットがあります。

<新居に引っ越してから空き家となるマイホームを売却する>

このパターンは先に新居を購入してから空き家となるマイホームを売却するパターンです。このパターンの良いところは、自分の買いたいタイミングで新居を購入できるという点です。一方で、空き家の分と新居2棟分のローンを抱えることになるため、世帯年収が高くなければローンを取り組めない事と、支払いが過大になってしまう事がデメリットとなります。

つなぎ融資を利用して、売却資金を新居の購入資金に充てることもできますが、売却できない場合等リスクがあります。ある程度資金力に余裕がある場合に選択できる方法と言えます。

<新たに賃貸に引っ越してから空き家となるマイホームを売却する>

このパターンは新たに賃貸物件に引っ越して、引越し先で空き屋となるマイホームを売却して、売却後に新居を購入するという方法です。このパターンでは、物件の案内等がしやすいという点や、全体の資金計画を立てやすいというメリットがありますが、賃貸物件に引っ越した段階で、住宅ローンの支払いと賃借料の2重支払いとなってしまう点、計画から新居への引っ越しまでに長い時間がかかってしまう点がデメリットとなります。

一般的に中古物件の売却は空き家の方が売りやすい傾向にありますが、それを許すだけの資金の余裕があるのかどうか、スケジュールの余裕があるのかどうか等、ご自分の状況に照らし合わせて理想の方法を選択する必要があります。

売却 VS 賃貸経営

先の例では空き家となる予定のマイホームの売却だけに焦点を合わせてご説明しましたが、空き家となったマイホームを賃貸に出して、自分は新居に住みながら賃貸経営をする方法もあります。

売却する場合、建物を維持する必要がないので資金的にも精神的にもすっきりする反面、多くの場合住宅ローンの残債よりも少ない価格での売却となってしまうのが実情です。一方賃貸経営に乗り出せば住宅ローンの支払い以上の家賃収入が得られる可能性がある反面、常に空室となってしまうリスクと戦う必要があり、また毎年の固定資産税の支払いや補修費用等一定期間毎の費用も発生します。

以下で、マイホームを売却する場合と賃貸経営をする場合の具体的なメリットとデメリットについて考えてみたいと思います。

<売却するメリット>

●ローンの残債よりも高い価格で売却できた場合には新居の購入費用に充てられる。

住宅の購入時にローンを組んでいた場合でも、ローンの残債より高い価格で売却できる可能性もあります。この場合、差額分は利益として新居の購入費用に充てたり、引越し費用に充てたりすることができます。高く売れそうなタイミングであれば思い切って売却するのも良いでしょう。

●借金の負担が減り、資金的にも精神的にもすっきりする。

不動産という資産を持ち続けることで、固定資産税や維持費を払い続ける必要があります。またローンを組んで購入している場合には借金も抱え続けることになります。こうした負担も売却してしまえばなくなり、資金的にも精神的にもすっきりすることができます。

●居住用不動産の特例等税制面で優遇を受けることができる。

住宅の購入価格よりも売却時の価格が高く(実際には経過年数によって減価償却を行います)売却による利益が出た場合には、その利益に対して譲渡所得が課されますが、居住用不動産の売却の場合3,000万円までは非課税とするといった特例が用意されています。賃貸に出してしまうとこの特例は利用できなくなります。

<売却するデメリット>

●いつ売却できるか分からず、スケジュールが立てづらい。

不動産の売却は買主がいて初めて成り立つものであり、いつ売却できるのかを予想することは難しいです。今すぐに購入したい新居がある場合でも、売却の目処がたたず流れてしまう可能性もあります。

●ローンの残債よりも安い価格での売却となった場合、差額を現金で用意する必要がある。

ローンの残債よりも安い価格での売却となってしまった場合、差額を現金で用意できなければ売却することができません。また売却価格は買主が現れてみないと最後まで分かりません。最後に価格交渉されてやむなく大きな額の出費となってしまう可能性もあります。

<賃貸経営をするメリット>

●賃貸経営による家賃収入が得られる。

賃貸経営による家賃収入で、返済中のローンよりも多額の収入を得られればローン分の負担がなくなるだけでなく、本業以外での収入を得ることができます。こうした収入を将来の生活設計に役立たせることもできるでしょう。

●定期借家契約を締結する等して一定期間後に再度住むこともできる。

一度賃貸に出してしまうと、借主の立場が強くなるためオーナーの意向で退去させることは難しいですが、定期借家契約を利用することで、2年後に再度住む等の計画を立てることもできます。

<賃貸経営をするデメリット>

●ローンで購入する場合、2棟分のローンを支払う必要がある。

新居をローンで購入する場合、2棟分のローンを支払う必要があります。賃貸収入が得られている間は良いですが、賃貸経営は常に空室のリスクがあり、空室となってしまった場合には新たに不動産会社に仲介手数料や広告費用を支払う等の出費も発生します。こうした状況にも耐えられるだけの収入や蓄えが必要です。

●家賃滞納やクレーム等入居者トラブルが発生する可能性がある。

入居者の中には家賃を滞納してしまう入居者や、ささいなことでクレームを言ってくる人もいます。こうした入居者への対応を本業の合間に行うことは精神的にきついものです。こうした業務は不動産会社に管理を依頼すれば代行してくれますが、管理費用を支払う必要があります。

●固定資産税やメンテナンス費用を継続して支払う必要がある。

賃貸経営はローンの支払いと家賃収入との差額が利益となりますが、毎年毎の固定資産税や火災保険料、壁の補修等のメンテナンス費用など定期的に経費が発生します。こうした費用をできるだけ安く抑えるために複数の業者に相見積を取らなければ採算が取れないケースもあります。

まとめ

売却と賃貸経営、ご自分にとってどちらが良いでしょうか?双方メリット・デメリットがありますが賃貸経営に乗り出す場合にはかなり本気で取り組まなければ損となってしまう可能性は高いと言えます。ご自分の資金力、将来設計と照らし合わせながら理想の選択を取るようにしましょう。