子供が上京し家を建て替えることになり空き家を売却
子供が上京することになり、夫婦2人だけの住居で良くなった。このような場合、特に50代以降の住み替えには老後の支払いも含めた資金計画を立てる必要があります。50代の住み替えの注意点や、住宅ローン完済についてお伝えします。
50代の住み替えの注意点
50代は住宅ローンを組める最後の年代と言える年代です。現行の住宅ローンの多くが完済時に80歳前後であればよく、例えば50歳の時に住宅ローンを組めば最長で30年程度の住宅ローンを組むこともできます。
ただし、組めることと支払えることは別の話です。
50代の住み替えの注意点は、住宅ローンの支払いの計画を通して、老後の支払い全般を計画する必要があるということです。
<公的年金の問題>
総務省の「家計調査」によると、世帯主が60歳以上の無職世帯の1カ月の支出は以下のようになっています。
- 食費 60.869円
- 住居費 16,158円
- 水道光熱費 21,042円
- 家具、家事用品 9,788円
- 被服等 6,940円
- 保健医療費 14,635円
- 交通、通信費 26,825円
- 教育、教養娯楽費 25,968円
- 交際費 28,749円
- その他支出 28,511円
- 合計 239,485円
この数字はあくまでも平均ですが、月々24万円程度の支出があることが分かります。
これに対して、老後の主な収入となる公的年金は、厚生年金で約14.5万円、国民年金で約5.4万円となっています。退職後も住宅ローンが残っていると、この公的年金から住宅ローンを支払い、残ったお金で生活していく必要があります。
また、現在の制度ではこうした老齢年金の支給開始は65歳から行われるため、定年退職してから年金が支給される年までの支払いに関しても考えておかなければなりません。
<退職金の額>
退職金の額は当然、勤めている企業によって異なりますが、厚生労働省の「就労条件総合調査結果の概要」によると、
大学卒(管理、事務、技術職)で1,941万円
高校卒(管理、事務、技術職)で1,673万円
が平均となっています。
退職金を住宅ローンの返済に充てるのも良いですが、その内のいくらかはできれば老後資金の一部にとっておけると良いでしょう。
<老後にかかる費用>
老後にかかる費用の平均は、3,000万円、という話を聞いたことがあるでしょうか。こうした老後にかかる費用はどのように算出されているのでしょうか。
60歳以降の生活費
会社勤めの方の場合多くが60歳の時には会社からの収入を失うため、60歳以降の生活費を考える必要があります。日本人の平均寿命を考慮して、85歳まで生きるとすると、25年間×12カ月×24万円でおよそ7,200万円となります。
65歳から85歳までの厚生年金(夫が厚生年金、妻が国民年金の場合)
厚生年金20年間×12カ月×(14.5万円+5.4万円)=4,776万円
生活費 - 厚生年金
7,200万円 - 4,776万円=2,424万円
上記以外にも大きな病気をした場合や介護が必要になった場合の費用なども見る必要があるため、だいたい3,000万円程度の老後費用が必要という計算です。
こうした、年金、退職金、老後にかかる費用を考慮した上でローンの設定期間と借入額を決める必要があります。
売却をして住宅ローンを減らそう
一戸建て住宅は、新築から中古になると建物の評価がガクッと下がるというデメリットがありますが、一方で土地の評価は経年劣化しないため、基本的には土地の価値分の売却額は期待できます。
子供が小さい内か、生まれる前に購入した住宅であれば住宅ローンの残債もだいぶ少なくなっているでしょう50代の住み替えでは、空き家を売却した上で残り少ないローンの残債を一括返済し、残った売却資金を新居の購入資金に充てるのが理想です。
<空き家の売却利益にも税金がかかる>
ところで、空き家の売却利益にも税金がかかります。これは、ローンの残債を完済して残った額に対してではなく、売却によって得た利益全体に対して、20%の税金が課されます。ただし、売却利益の算出に際しては、売却価格-(取得費+譲渡費用)というように、取得費=購入した時に要した費用や、不動産の購入価格を差し引くことができることになっています。(建物は減価償却を行います)
空き家の売却に際しては、購入時の書類を用意しておくようにしましょう。
<居住用不動産の売却の特例がある>
実際にマイホームとして利用していた住宅(=居住用不動産)を売却する場合には上記の売却利益に対して、3,000万円までは非課税とする特例があります。この居住用不動産の特例を利用できる期限が、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末まで、となっています。つまり、平成27年6月に引っ越した場合には平成30年12月31日まで3,000万円の特例を利用することができます。
このようにマイホームを空き家にしてから売却する場合には、3年以内に売却するようにしましょう。
尚、この居住用不動産の売却の特例と住宅ローン控除との重複適用は不可となっていますので、どちらを利用するとお得かを検討する必要があります。
<売却資金は新居の購入資金に回そう>
空き家になる住宅を売却して得た売却資金ですが、老後費用として貯蓄に回すよりも、新居の購入資金に充てたほうが支払う利息を抑えることができます。例えば、売却して得た利益が1,000万円ある場合で、3,000万円の新居を購入する場合、1,000万円を新居に充てる場合と充てない場合との違いを見てみましょう。
住宅ローン3,000万円を30年間借りる場合(金利2%)=月々支払110,885円 利息分約992万円
住宅ローン2,000万円を30年間借りる場合(金利2%)=月々支払73,923円 利息分約661万円
このように、3,000万円の購入資金の内1,000万円を現金で支払うだけで331万円も得をすることができます。
<住宅ローンは期間が短ければ短いほどお得>
また、同じように住宅ローンの設定期間は短ければ短い程お得です。特に、50歳の時点で30年間の住宅ローンを組んで80歳まで支払い続けるプランは少し無謀とも言えます。
住宅ローン2,000万円を30年間借り入れる場合(金利2%)=月々支払73,923円 利息分約661万円
住宅ローン2,000万円を10年間借り入れる場合(金利2%)=月々支払184,026円 利息分約208万円
このように、30年間を10年間に短縮すると月々の支払いは高くなりますが、453万円もの利息を節約することができます。ただし、住宅ローン控除を利用する場合には借入期間は10年より短くしないようにしましょう。
<団体信用生命保険を効果的に利用しよう>
住宅ローンには団体信用生命保険といって、住宅ローン支払い中に債務者が死亡した場合には住宅ローンの債務がなくなるという制度があります。通常生命保険は年齢が高くなるほど支払い額が高くなりますが、団体信用生命保険は基本的にどの年代も同じ。住宅ローンを組むときに高齢であればあるほど、団体信用生命保険の効果が高くなるのです。
まとめ
50代の家の建て替えは、老後も含めた住宅ローンの支払い計画をしっかり行うことが大切になります。空き家を売却した資金はできるだけ新居の購入資金に充てるなどして、少しでもお得になる資金計画を立てましょう。