離婚をきっかけに空き家を売却
家族のために購入したマイホームも、離婚してしまうと、財産として何らかの対処をする必要があります。
離婚してどちらかが住み続ける場合もありますし、売却したり賃貸に出したりする場合もあるでしょう。
今回は、婚姻期間中にマイホームを購入した場合、離婚してどちらかが住み続ける場合の財産分与や、離婚して空き家になったマイホームを売却する場合の注意点についてお伝えします。
財産分与の考え方
婚姻期間中に夫婦で築いた財産は、離婚するとそれがどちらの名義かに関わらず合計して夫婦で折半をします。このことを財産分与と呼びますが、財産分与の対象期間は結婚してから離婚するまでで、独身自体の財産や親からの贈与等は財産分与の対象となりません。このため、実家がお金持ちのようなケースでも、親からの贈与や親の財産を分け合うことはありません。
通常は上記の原則通りに財産分与が行われますが、不動産、特に住宅ローンを組んだ不動産の場合例外となるケースがあります。
<住宅ローンを組んだマイホームの財産分与>
住宅ローンを組んで購入したマイホームを所有したまま離婚する場合、主に次の3つのパターンがあります。
- ローンの名義人がそのままマイホームに住み続ける。
- ローンの名義人でないものがそのままマイホームに住み続ける。
- マイホームを売却して、その代金を折半する。
<ローンの名義人がそのままマイホームに住み続ける>
このパターンは、ローンの名義人(通常、夫)が離婚してそのままマイホームに住み続けるというものです。離婚時には財産分与をしますが、マイホームという資産が夫だけのものになるのは不公平なので、出ていった妻はマイホームの時価から、ローン残高を差し引いた金額が財産分与の対象となります。
例えば、3,000万円のマイホームを購入して、残債が2,000万円、現在売却できる価格(時価)が2,500万円だった場合500万円が財産分与の対象となります。
<ローンの名義人でないものがそのままマイホームに住み続ける>
このパターンは、ローンの名義人でないもの(通常、妻)が離婚してそのままマイホームに住み続けるというものです。この場合、ローンの名義を妻に変えることができれば、先の例と同じように差額が財産分与の対象となります。名義を変えない場合には妻が住むマイホームのローンを夫が支払い続けることになります。
名義を変えない場合で、養育費が必要なケースの場合にはマイホームの支払いが養育費の代わりとなる場合もあります。
<マイホームを売却して、代金を折半する>
マイホームの売却価格がローンの残債より大きい場合、マイホームを売却してローンを完済した後の代金を折半することになります。現実的には、ローンの残債と時価との差額を現金で用意するのも大変ですし、自分が住まないマイホームの支払いを続けるのも大変なので、売却してしまえばすっきりします。
離婚して空き家になった家を売却するには
婚姻期間中に購入したマイホームは、離婚する際にどちらか一方が住み続けることもできますが、どちらかの名義で組んだ住宅ローンがある場合には少し話がややこしくなってしまいます。こうした場合、ほとんどの方はどちらかが住み続けるよりも売却して清算してしまいと考えるものです。
しかし、住宅ローンを組んで購入したマイホームを売却する場合にはそのローンの残債に気を付ける必要があります。具体的には、マイホームの売却価格がローンの残債よりも高い必要があります。
<離婚して空き家になった家のマイホームの売却手順>
離婚して空き家になる予定のマイホームの売却手順は通常の不動産の売却手順と同じです。
- 不動産仲介業者に査定をしてもらう。
- 査定価格に納得したら仲介を依頼する不動産仲介業者と契約をする。
- 売却物件の見学会をするなど売却活動を行う。
- 買主が決まると、価格交渉をして(ない場合もある)売却価格が決定する。
- ローンの残債を完済して、現金の残りがあれば折半する。
このようにローンの残債よりも売却価格が高い場合にはスムーズに話を進めることができるでしょう。
一方で、ローンの残債よりも売却が低い場合にはどうすれば良いのでしょうか。
<ローンの残債よりもマイホームの売却価格が低い場合>
マイホームを購入する際、住宅ローンを組んでいた場合には、土地と建物それぞれに対して抵当権を設定しています。抵当権とは、住宅ローンを支払えなくなった場合に、抵当権を設定した不動産を差し押さえることのできる権利のことを指します。抵当権は住宅ローンを完済できなければ外すことができません。
他人の抵当権がついた住宅を買いたいという方はいません。つまり、マイホームを売却するには住宅ローンを完済する必要があるのですが、売却価格がローンの残債に満たない場合には差額を現金で用意する必要があります。例えば、ローンの残債が2,000万円ある物件が1,500万円でしか売れなかった場合、差額の500万円を現金で用意する必要があります。
<新築物件は引き渡してすぐに3割価値が落ちる>
新築物件は引き渡してすぐに3割価値が落ちると言われています。つまり、3,000万円かけて購入したマイホームも引き渡しを受けた翌日には2,100万円の価値に落ちている可能性があるのです。全額住宅ローンを組んで購入していた場合、900万円もの現金がなければ売却することができないことになります。売主としては「3,000万円で購入した」という思いがあるため、売却価格を高く見積もってしまいがちですが、この辺りのところに気を付ける必要があります。
<査定価格=売却価格ではない>
最初に不動産仲介業者に話を持ちかけると不動産の査定価格を出されますが、この査定価格は売却価格ではありません。最初は少し相場よりも高い査定価格を出す不動産会社もありますし、相場通りだとしても、買主としては少しでも安い価格で買いたいため、価格交渉をしてくることがほとんどです。また、売却価格を高く設定すればその分売却できるまでに時間がかかります。「ローンの残債以上で売りたい」という条件をつけて売却活動を始めると、売れ残ってしまう可能性もあります。
<任意売却という手もある>
どうしてもローンの残債が残ってしまうという場合、任意売却をする方法があります。任意売却とは、抵当権を設定している銀行と相談をして債務超過状態の不動産を売却する方法です。任意売却をすると、マイホームの売却価格がローンの残債よりも安い場合でも売却の手続きをすることができます。
残った債務については自己破産するケースもあるので注意が必要ですが、示談で住む場合もあります。実際に任意売却を検討する場合、専門家の意見を聞いてからとなりますが離婚でマイホームを売却する場合の手段の一つとして覚えておくと良いでしょう。
今回のまとめ
離婚を機にマイホームを売却する場合、財産分与やローンの残債について注意する必要があります。離婚は精神的にも辛いことですが、今回お伝えしたことを参考にしっかりとした手続きを行いましょう。