column 835. 暮らす

引っ越ししたら住民票は移さないとダメ?移さないとどうなるの?

2023.02.14

引っ越ししたら住民票は移さないとダメ?

引っ越しして住所が変わると、役所で住民票を移す必要があります。 ただ、役所は昼間しか開いておらず、引っ越し前後は準備や荷ほどきで忙しいので、できれば住民票の手続きをやりたくないという方もいるでしょう。
今回は、引っ越しをした後に住民票を移さなかった場合どうなるのか、住民票を移すときはどのような手続きが必要になるのかを解説します。

住民票を移さないと法律違反になる

●2週間以内に住民票を移さないと5万円以下の罰金

意外と知らない方も多いのですが、引っ越しをした後に住民票を移さずにいるのは法律違反です。 日本では、国民の住所地や人口等を自治体が正確に管理できるよう、「住民基本台帳法」という法律で、居住者の氏名・生年月日・性別・住所・世帯主との関係性(親子など)を役所に登録することが義務付けられています。 「引っ越しをしたら現住所の役所に住民票を移すこと」は法律で決められた義務なので、正当な理由もなく引っ越し後2週間以内に住民票を移さなかった場合、5万円以下の過料(軽い罰金刑)を徴収されてしまうのです。
ただ、同じ市区町村内で引っ越しをした場合や違う地域に引っ越した場合などで、具体的な手続きの内容は変わってきます。 一口に住民票を移すといっても、状況によって取るべき手続きが異なるので、「自分の場合はどの書類を提出すれば良いか」を判断できるようになりましょう。

引っ越し後に住民票を移さずにいると生じるデメリット

なお、住民票を移さないと5万円以下の過料を徴収されますが、実際に請求されるケースはまずありません。 ただし、罰金の通知がこなかったとしても、引っ越しをしたら住民票を新居の役所に移しましょう。 なぜなら、住民票を移さないと以下のようなデメリットを受けることになるからです。

  • 免許の更新通知が元の住所に届く上に更新手続きも旧住所地でしか行えない
  • 保険証やマイナンバーカードなど、本人確認書類の住所を更新できない
  • 新居近くの役所で住民票などの書類を発行してもらえない
  • 引っ越し先の住所地で選挙に参加できない
  • 住民向けに提供されている福祉・公共サービス(図書館など)を利用できない

自治体による公共サービスや各種証明書の発行は、「その自治体に住民票を置いている方」に提供されています。 住民票を移していないと、公的な書類や手続きが制限されたり、何か手続きをする際住民票を置いている旧住所の役所まで足を運んだりする必要があるので、住民票を元の住所地に残しておくメリットはありません。

引っ越し後に住民票を移さなくても良いケース

実は、住民台帳基本法には、「正当な理由」がある場合、引っ越しをしても住民票を移さなくて良いというルールがあります。 では、正当な理由が何なのかというと、具体的には以下の条件を満たすときです。

  • 1年以内に元の住所地に戻ってくる場合
  • 進学などで一時的に親元を離れる場合
  • 引っ越した後も生活の拠点が元の住所地にある場合

出張・進学・単身赴任・別荘・2拠点生活など、新住所で過ごす時間が短かったり、週末など定期的に元の住まいに帰ってきたりする場合、住民票を移す必要はありません。 なお、住民票の移動は、引っ越し後14日以内の期限を越えてしまっても、受け付けてもらえます。 最初は生活の拠点を移すつもりがなくても、引っ越し後に予定が変わり、新しい住所で生活していくことになったときは、改めて住民票を移しましょう。

元の住所と同じ市区町村に引っ越す場合

住民票を移動させる際に使う書類は、「転居届」「転出届」「転入届」の主に3種類です。 そして、もともと住んでいた市区町村内で引っ越しをする場合、お世話になる自治体は変わらないので、「転居届」だけで住民票を移動できます。 手続きの方法は、最寄りの役所の窓口で「住民異動届」を手に入れ、必要事項を埋めて窓口に提出するだけです。
本人確認書類と印鑑も求められるので、用意しておきましょう。 なお、自治体によって印鑑が必要かどうかは違うので、事前に確認しておくことをおすすめします。

元の住所とは違う市区町村に引っ越す場合

●「転出届」と「転入届」を出す必要がある

引っ越しによって住所地の市区町村が変わる場合、「転出届」と「転入届」両方の提出が必要です。 転出届は、「これから違う自治体に住民票を移します」と元の住所地の役所に知らせる書類で、役所の窓口に提出すると「転出証明書」というものをもらえます。 旧住所の役所で転出証明書をもらったら、新居を管轄している地域の役所に出向き、「新しく住民票を移します」という書類である転入届と、元の自治体から転出したときにもらえる転出証明書を提出すれば住民票の移動は完了です。
基本的に、転入届は転出証明書がないと受け付けてもらえません。 新居へ移る前に、元の住所地の役所で転出届を出しておきましょう。

転出届は郵送やオンラインで手続きできる場合も

自治体にもよりますが、転出届は郵送またはオンラインでも提出できます。 遠方への引っ越しなどで、元の住所地に中々足を伸ばせない場合は、必要書類を郵送で送り、転出証明書を送ってもらいましょう。 オンラインで手続きをする場合、マイナンバーカードとマイナンバーカードを読み取れるICカードリーダー、パソコンが必要です。 オンラインで転入届を出すと、特例として転出証明書の添付が不要になります。
転入届は窓口でのみ提出できる書類なので、新住所の役所でマイナンバーカードを見せ、「特例による転入届」をもらって提出しましょう。

海外に引っ越す・海外から戻ってくる場合はどうなるの?

●海外に1年以上滞在する場合は「転出届」の提出が必要

海外への引っ越しだと、現地に1年以上滞在する場合は「転出届」を元の住所地の役所に提出する必要があります。 これは、海外での滞在期間が1年を越えると生活の拠点を国外へ移したと考えられるからです。 1年未満の海外出張や旅行、留学の場合、海外生活を終えたら短期間で元の住まいに帰ってくるため、転出届を出す必要はありません。

●帰国後1年以上日本で過ごす場合は「転入届」の提出が必要

海外で過ごしていた方が帰国し、日本で1年以上過ごす場合、日本の住所地を管轄している地域の役所で転入届を提出します。 海外にあった生活の拠点を日本へ移すという手続きになるため、帰国後の住民票手続きでは、転入届以外に海外生活を証明するパスポートや年金手帳、戸籍の附票の写しなどが必要です。 海外に拠点を置いたままだと、例えば国内で銀行口座を開いたり賃貸物件を借りたりする際に手間取るので、海外生活を終えたらできるだけ早く転入届を提出しましょう。

住民票の手続きは代理人に頼めるのか

住民票に関する手続きは、原則としてどれも代理人に委任できます。 ただし、正式な許可や同意のない第三者が代理人として勝手に住民票を移せると問題になるため、代理人に手続きをしてもらう場合、委任状と代理人の印鑑、そして代理人の本人確認書類が必要不可欠です。 しかし、同じ世帯の家族であれば、委任状なしで本人の変わりに住民票を移せます。
なお、オンラインで転出届を提出しており、転入届の提出を代理人に任せる場合、本人のマイナンバーカードなども必要です。 必要書類や委任状の形式は自治体によって異なるので、確認しておきましょう。

住民票と戸籍の違い

住民票は、個人が現在どこに住んでいるのかを証明するための書類です。 世帯主との続柄は記載しますが、住民票に載っている本人がどこの誰の子どもで、誰と結婚しているのか、これまでどの住所で暮らしていたかなどはわかりません。 一方の戸籍は、過去から現在に至るまでの家族構成を記録し、証明するための書類です。
戸籍は家系図のようなもので、「誰の子どもなのか」「誰と結婚したのか」「過去どこからどこへ引っ越しをしたのか」などを追跡できるようになっています。 結婚すると元の家族の戸籍から抜け、新しい戸籍を作ることになりますが、「いつどこの戸籍から抜けたのか」等も記録されているため、住民票よりも内容が複雑です。

併せて役所で行っておきたいこと

●マイナンバーカードの住所変更

マイナンバーカードには、本人確認用の顔写真と、住民票の住所地が記載されています。 マイナンバーカードの住所地と現住所が違うと、本人確認ができないので、引っ越しをしたら役所でマイナンバーカードの住所変更手続きも済ませましょう。 転出・転入の手続きを済ませていても、マイナンバーカードの住所を変更していない場合、90日でマイナンバーカードそのものが失効してしまいます。

新たな印鑑登録

印鑑登録は、住民票を置いている自治体に使いたい印鑑を登録する手続きです。 転出届を出すと、過去の印鑑登録が抹消されてしまうため、これまで使っていた印鑑を正式なものとして使いたい場合は、新住所地の役所で改めて印鑑登録を行いましょう。
引っ越しに伴って必要になる契約手続きには、印鑑を求められることも多いです。 転入届の提出時に、印鑑登録を済ませると良いでしょう。

年金・保険などの手続き

  • 国民年金
  • 国民健康保険
  • 介護保険
  • 児童手当
  • 公立学校の転校手続き

といった手続きも、住民票を移すとき一緒に終わらせると楽です。 公的な福祉や介助は、住所地が違うと利用できません。 役所は民間企業と違って夕方で窓口が閉まるので、時間を有効活用するためにも、引っ越しをするときはすべての手続きを一日で終わらせましょう。

まとめ

住民票を移さないと法律違反になってしまうので、引っ越しをしたら基本的に新しい住所地へ住民票を移す必要があります。 ただ、引っ越し先で過ごす期間が1年未満で、生活の拠点を移すつもりがないなら、転出届や転入届を出さなくても問題はありません。
住民票を移す手続き自体は短時間で終わりますが、転入届を出すためには転出届を提出しておく必要がありますし、マイナンバーカードの住所変更など一緒に行った方が良い手続きも多いので、引っ越し後は1日、役所関係の手続きをする日を設けて取り組みましょう。

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