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扶養から外れると税金はいくら増えるの?損しないための扶養の知識

2023.09.04

扶養から外れると税金はいくら増えるの?損しないための扶養の知識

日本には、配偶者の扶養に入っている場合、本人は所得税や各種社会保険料などの支払いを免除され、一家の大黒柱たる配偶者は配偶者控除を利用して所得税・住民税を節税できるという制度があります。

ただし、パートナーの扶養に入れるのは、年収が一定額を下回る場合のみ。
本人がいくら稼ぐのかによって、パートナーが受けられる控除の額や、収入が増えた分、出ていくお金の額も変わってくるため、効率良く世帯収入を増やすためには、扶養と収入に関する知識が必要不可欠です。

今回は、お金を稼いで損をしないようにするために知っておきたい、扶養・収入・税金の基礎をお伝えします。

年収がいくらを越えると配偶者の扶養から外れるの?

●完全に配偶者の扶養から外れるのは年収201万円以上

もともと配偶者の扶養に入っていた方が、完全に配偶者の扶養から外れる金額は、年収201万円以上です。

なぜ201万円なのかというと、一年で201万円よりも多く稼いだ場合、配偶者が所得税の「配偶者控除」「配偶者特別控除」を利用できなくなるから。

配偶者控除は、「一家の大黒柱が結婚・同居している相手の生活費を負担する場合、本人の税金を安くしてあげよう」という趣旨の節税制度です。
もともと、所得税の扶養制度には、「年収103万円以下なら扶養に入りパートナーが控除を受けられる」配偶者控除しかありませんでしたが、2018年の法改正で配偶者特別控除ができたことによって、「年収103~201万円」の方も扶養に入れるようになっています。

パートやアルバイトなどで働く時間や年収を抑え、相手の扶養に入るのは、扶養に入ると配偶者の税金が安くなるからです。
しかし、年収201万円を越え、扶養から完全に外れてしまうと、配偶者の税に関する優遇は受けられません。

●年収150万円を越えると配偶者特別控除が減る

配偶者特別控除は、「扶養されている方の年収がいくらか」によって、配偶者側の控除額が変わる制度です。
扶養されている方の収入が201万円に近づけば近づくほど、控除の額は減っていきます。
そして、配偶者特別控除の上限額、「38万円の控除」を利用できるのが、年収150万円以下なのです。
ギリギリ扶養に入っている金額、例えば年収200万円の場合、配偶者が受けられる所得控除は最大3万円となります。

●年収130万円以上で社会保険の扶養も外れる

社会保険の扶養から外れてしまうのが、年収130万円以上です。
扶養には、「所得税の扶養」と「社会保険の扶養」の2種類があります。
所得税の扶養は、「扶養に入っていればパートナーの税金が安くなる」というもので、社会保険の扶養は、「扶養に入っていれば、配偶者が契約している健康保険や厚生年金の保障を自身も受けられる」というもの。
年収130万円未満なら、夫婦の一方の社会保険料が免除されるので、一人分の社会保険料で夫婦ふたり分の保障を受けられます。
しかし、年収130万円以上稼ぐと、法律上の義務として、自身も社会保険に加入する必要があるのです。
社会保険の扶養から外れたら、健康保険料や厚生年金を自分で支払うことになります。

●勤め先の規模によっては年収106万円以上で社会保険の加入が必須に

社会保険の加入義務として設けられている基準は、元々年収130万円でしたが、法改正によって、一部の職場では「年収106万円で社会保険の扶養から外れる」ことになりました。

具体的な基準は、以下の通りです。
・従業員の数が101~500人未満
・1週間に20時間以上働いている
・月収が8.8万円以上

130万円基準との違いは、
・106万円の計算に残業代・通勤手当・ボーナスなどは含まない
・繁忙期などで一時的に月収8.8万円を越えた場合は社会保険に加入しなくて良い
こと。

「週5日・毎日6時間働く」など、労働契約で週20時間以上の労働と月8.8万円以上の収入が確保されている場合、年収106万円以上で社会保険の扶養から外れます。

●年収103万円を越えると配偶者控除を受けられない

年収103万円を越えると、配偶者控除を受けられません。
配偶者控除の控除額は、配偶者特別控除と同じく38万円。
ただし、配偶者特別控除と違って、配偶者控除の場合、本人の年収が0円でも103万円以下でも、パートナーは同じ金額の所得控除を利用できます。

ちなみに、なぜ年収103万円以下なら配偶者控除に入れるのかというと、基礎控除48万円と給与所得控除の最低額55万円を足すと、103万円になるからです。
日本の所得税は、収入から経費と控除を引いた余り、所得で税金を計算するという仕組みになっています。
収入から経費・控除を引いてゼロになれば、ゼロに何%をかけてもゼロなので、年収103万円以下だと所得税も住民税も無税です。

また、社会保険料の加入義務も満たしていないため、社会保険料を支払う必要もありません。
だからこそ、法改正で配偶者特別控除ができるまでは、年収が103万円を越えるかどうかが家計にとって非常に重要だったのです。

扶養が外れるとどんな問題がある?

●所得税や住民税が高くなる

年収が103万円または201万円を越えると、配偶者控除が減ったり配偶者特別控除を使えなくなったりするため、配偶者の所得税や住民税が増えることになります。
また、年収が103万円を越えると、自分の収入に対する所得税と住民税の納税も必要です。
所得税の最低税率は5%ですが、毎月源泉徴収で手取りが減るので、ギリギリ年に103万円以上稼いでしまうと、かえって使えるお金が減ってしまいます。

●社会保険料が増える

年収106万円、または130万円以上稼いで社会保険の扶養から外れたら、社会保険料の支払いが必要です。
加入する健康保険にもよりますが、月々の社会保険料は、年収130万円で月額16,000円程度。
年収が低ければ低いほど、社会保険料の負担は大きくなります。
社会保険料を払っても手元に残るお金を増やしたい場合、年収150万円以上を目指すと良いでしょう。

扶養から外れると二度と戻れないのか

転職したり労働時間を伸ばしたりして、一度扶養から外れてしまっても、扶養に入るための条件を再び満たせば、配偶者の扶養に戻れます。
勤め先を辞めなくても、年収を201万円未満に抑えれば、配偶者特別控除を利用できますし、年収を130万円未満に抑えれば社会保険を脱退可能です。

ただし、扶養に入れるかどうかは、1年間の収入や所得で決まります。
2023年に扶養から外れた場合、扶養に入れるようになるのは翌年以降です。

扶養から外れたときに必要な手続き

●配偶者の会社を通じて健康保険組合や年金事務所に書類を出す

配偶者がサラリーマンをしている場合、パートナーの税金は会社が計算・納税してくれているため、会社に扶養から外れたことを伝える必要があります。

また、健康保険や厚生年金も会社経由で加入しているので、配偶者を通じて健康保険の組合や年金事務所に「被扶養者異動届」という書類を提出し、健康保険証を返却しましょう。
なお、手続きは、扶養を外れてから原則5日以内に行う必要があります。

●勤め先の社会保険または国民年金・国民健康保険に加入する

配偶者の社会保険を脱退したら、自身の勤め先で社会保険の加入手続きをしましょう。
もし、自営業等で組合の健康保険や厚生年金に加入できない場合は、国民年金と国民健康保険への加入が必須です。
日本には国民皆保険制度があるため、社会保険に加入していない期間は、全て国民年金や国民健康保険に加入し、保険料を支払う必要があります。
年金手帳や身分証明書を持ち、年金事務所や役所の窓口で手続きを行いましょう。

月収別に見る手取りと配偶者の税負担の変化

税金や社会保険料のかからない年収(103万円)から、社会保険料の加入が必須になる金額(130万円)、配偶者特別控除を上限額で使える額(150万円)、完全に扶養を外れる額(204万円)まで収入を上げていった場合の、月収と手取りは以下の通りです。

月収 手取り
8.5万円 8.5万円
10.8万円 9万円
12.5万円 10.3万円
17万円 14万円

一方、配偶者の税負担に関しては、被扶養者の年収が150万円を越えるまで変わりません。
年収150万円未満は、配偶者控除・配偶者特別控除共に上限の38万円使えるからです。

ただし、被扶養者の年収150万円から201万円までの間、被扶養者が稼げば稼ぐほど配偶者の所得税と住民税が高くなっていきます。
たとえば、配偶者の年収が400万円だった場合、税負担の推移は以下の通りです。

扶養されている方の年収 配偶者の所得税・住民税
年収150万円 21万円
年収160万円 21.5万円
年収201万円越え 26.2万円

150万円より10万円多く稼ぐ程度なら、増える税金は数千円レベルですが、被扶養者が完全に扶養から外れるくらい稼ぐと、5.2万円納税額が増えることになります。
配偶者の年収が600万円なら最大7.1万円増、年収800万円なら最大10.9万円増です。

扶養から外れるメリットは?

●世帯収入が増えて好きなように働ける

年収103万円以下、または130万円以下に抑えていた方が扶養から外れるメリットは、収入を伸ばせば伸ばした分だけ家計に余裕ができること。
年収130万円から150万円までの間は、社会保険料の支払いで手取りが目減りするので、お金のことを考えるなら150万円以上、または201万円以上稼ぐとお得です。

また、労働時間などを気にする必要がないので、アルバイトやパートを辞めて正社員になったり、起業したりできるようになります。

●社会保険に加入できるので老後の保障等が手厚くなる

社会保険は、「被扶養者」の保障より、「契約者」として受けられる保障の方が手厚いです。
たとえば、社会保険の扶養に入った場合、自分で年金を払っていないので、配偶者に比べて将来もらえる年金が少なくなります。
年収を増やして社会保険に加入すれば、厚生年金を自分で支払うため、その分、年金の受給額が増えてお得です。

まとめ

年収201万円を越え、結婚しているパートナーの扶養から外れると、配偶者の所得税と住民税は最大で10.9万円高くなります。

また、被扶養者の年収が130万円を越えた場合、社会保険の加入が必要です。
被保険者がいくら稼ぐかによって、家計全体の負担は変わってきます。
年収を増やして手に入るお金と、収入が増えた分高くなる税と社会保険料、どちらを取るかはご家庭次第。
必要に応じて税理士などのプロに相談し、無理せず年収を増やせるラインを見極めましょう。

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