親から不動産を相続したとき、多くの方が頭を悩ませるのが、相続した不動産を持っておいた方が良いのか、それとも売却した方が良いのかという問題です。

不動産の扱いに慣れているならともかく、たとえばマイホームの購入や不動産投資をしておらず、不動産業界で働いてもいないという方だと、どちらがお得なのかまったく見当がつかないでしょう。

そこで今回は、相続不動産の維持と売却ならどちらの方がお得なのかを考える判断材料として、それぞれのメリットとデメリットを比較していきます。

●マイホームやセカンドホームとして使える

相続不動産を所有し続けるメリットは、住まいをそのまま利用できることです。
自宅から片道数時間程度の距離で、相続した不動産周辺の環境が気に入っているというような場合なら、週末や月末だけ第2の住まいとして利用しても良いでしょう。

また、テレワークなどで場所を気にせず働ける場合、相続を機に引っ越してしまうのも一つの手です。
多くの場合、マイホームを始めとした不動産は相続した時点でローンを完済されているので、建物の基礎や内装に問題がなければ家賃を大幅に抑えられるでしょう。

●賃貸物件や貸地として運用も可能

自分で住む予定がなかったとしても、土地や建物という現物資産を持っていれば賃貸として活用可能です。
借り主や入居者を確保できるかどうかで得をするか損をするかが大きく変わってきますが、借り主さえいれば維持費を賃料収入から払いつつ不動産を維持できるでしょう。
「思い出があるためできれば売りたくない」「近所に借りたいといっている人がいる」といった状況なら、賃貸運用もおすすめです。

●維持費や修繕費がかかる

一方、相続不動産を売らずに持っておくためには、維持費や修繕費がかかります。
建物は古くなればなるほど劣化や破損のペースが早まってしまうため、築年数の古い物件だと修繕費だけでもそれなりの負担です。

かといって、修繕やメンテナンスをせずに住宅を維持していると、劣化が進んでしまいます。
庭木が隣地に入ってしまったり無人だからと不審者が入り込んだりするリスクもあるため、不動産を持っている限りは管理が必要です。

●まとまったお金が手に入る

相続不動産を手放す最大のメリットは、まとまった現金を入手できること。
物件の価値やどの不動産業者に仲介してもらうかによって売却価格は上下するものの、不動産は安い商品ではありません。
数百万円、物件次第では数千万円で売却できれば、金銭的な面で大きな余裕を持てるでしょう。

ただし、不動産を売って黒字になった場合、税金がかかるので、利用できる税の特例を調べたり確定申告をしたりして節税に取り組む必要があります。

●管理の手間や維持費から解放される

相続不動産を手放してしまえば、草刈りや掃除、換気をする必要がありません。
遠方の物件など、物理的に管理するのが大変な不動産に関しては売却した方が手続き面の負担を減らせます。

また、不動産を売ることで、毎年必ず発生する固定資産税や都市計画税、その他修繕費用などから解放されるのもポイントです。
年間数万円から十数万円程度であっても負担には変わりないので、維持・管理の費用や手間が面倒だと感じるなら相続不動産を売却すると良いでしょう。

●相続人との話し合いや不動産業者探しが必要

相続不動産を売却する場合、相続人全員の同意が必要です。
また、相続税の納税期限は相続開始から10ヵ月以内。
故人を弔いつつ、遺産分割の話し合いを行って不動産業者探しまで行う余裕はなかなかないもの。
遺族の中で売却賛成と反対の意見が割れていると手続きを進められないので、相続不動産を売るときは早目に不動産業者を探し、不動産を売った方がお得だと相続人を説得する時間も作りましょう。

相続不動産を維持するか売却するか迷ったときは、「土地や建物の維持・管理が苦になるかどうか」「相続不動産に住む予定があるか」を考えるのがおすすめです。

費用面の負担が少ないため家を維持しておきたい、または相続した住まいを利用する予定があるなら無理に不動産を手放す必要はありません。
逆に、不動産の維持・管理が大きな負担になったり、住む予定がなかったりする場合は売却した方がお得です。

人それぞれ不動産の維持管理コストに対する考え方は違うため、自らに合った不動産の扱いを決めましょう。

相続不動産は、使う予定があれば維持し、住む予定がないなら売却することをおすすめします。
維持・売却どちらにもメリットとデメリットがある以上、絶対的な答えはありません。

ただ、どちらかお得かを判断するためには、不動産がいくらで売れるかを知っておくことも重要です。
不動産の売却には時間がかかります。相続税の納税期限も考慮する必要があるため、相続で不動産を受け継ぐことになったら、まずは不動産業者に見積もり価格を出してもらいましょう。