マイホームは、多くの場合、人生の中で最も高価な買い物です。
家選びや資金計画に失敗すると、そう簡単には取り返しがつかないため、どのタイミングで住宅購入に踏み切れば良いのか、悩んでしまう方が少なくありません。
そこで今回は、住宅ローンと金利・年齢・年収・ライフイベントといったさまざまな観点から、マイホームの所有者がどういったタイミングで家を買っているのかをお伝えします。
住宅ローンと金利から考える住宅購入の時期
●35年ローンを組める間に買う
短期のローンだと借りられる額が減ってしまうため、住宅ローンを利用するなら、35年ローンを利用するのがおすすめです。
ただし、多くの金融機関では、完済時の年齢を最大で80歳前後に設定しているため、60歳でローンを組むと、返済期間20年以下のローンしか利用できません。
ローンで家を買う場合、35年ローンを組める45歳までに購入することをひとつの目安にすると良いでしょう。
●住宅ローン金利が低い間に購入する
住宅ローンの金利は、景気に合わせて変わります。
ただ、金利が上がると利息の負担も増えてしまうため、住宅ローンを組むなら金利が低い時期を狙うのがおすすめです。
一般的に、金利が低いとローン審査にも通りやすくなるとされています。
金利はゆるやかに変動していくものなので、普段から金利やローン関係のニュースをチェックして、金利が上がる前に住宅購入を決めましょう。
●持ち家は若い時に無理のない予算で買うのがお得
住宅ローンや金利という観点で家を買うタイミングを考えた場合、持ち家はできるだけ若い時に、予算を抑えてローンで購入する方がお得です。
年齢が若いと長期のローンを組めますし、健康な方が多いため、病気で審査に落ちるリスクも低くなります。
収入の関係上、大きな額は中々借りられませんが、持ち家、特に注文住宅は、建ててみても理想通りにならないケースが多いです。
若い時に1軒目を買って早目に完済すれば、1軒目の不満点をリフォームや建て替えで改善し、より住み心地の良い家で暮らせるというメリットがあります。
年齢から考える住宅購入時期
国土交通省が公表している、2024年度の住宅購入者向けアンケート調査「住宅市場動向調査」によると、住宅は30~40代で購入する方が多いです。※1
ただし、一口に家といっても、戸建てとマンション、新築と中古では価格が違います。
そこで、住宅市場動向調査から、新築の注文住宅・分譲戸建て・分譲マンション・中古戸建て・中古マンションそれぞれの「住宅購入者が一番多い年齢層」と「平均年齢」をまとめたのが、以下の表です。
| 住まいの種類 |
年齢の中央値 |
平均年齢 |
| 注文住宅 |
30代 |
42.1歳 |
| 分譲戸建て |
30代 |
38.2歳 |
| 分譲マンション |
30代 |
43歳 |
| 中古戸建て |
30代・40代 |
46.7歳 |
| 中古マンション |
30代 |
46.7歳 |
新築に限っていえば、30代の半ばから40代前半までに、多くの方が住宅購入を決断していると考えて良いでしょう。
※1:国土交通省:令和5年度住宅市場動向調査報告書
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001757420.pdf
年収から考える住宅購入時期
同じく、住宅市場動向調査から、マイホームを買った方々の世帯年収をまとめたものが、こちらです。※1
| 住まいの種類 |
年収の中央値 |
平均年収 |
| 注文住宅 |
600~800万円 |
915万円 |
| 分譲戸建て |
400~600万円 |
761万円 |
| 分譲マンション |
400~600万円 |
871万円 |
| 中古戸建て |
400~600万円 |
678万円 |
| 中古マンション |
400~600万円 |
729万円 |
住宅購入者の平均年収だけを見ると、意外と高いと感じるかもしれませんが、実際には多くの方が世帯年収400から600万円で住宅を購入しています。
日本の平均年収は、400万円前後です。
平均以上の収入がある方や、共働き世帯であれば、マイホームに手が届きます。
ライフステージ・ライフイベントから考える住宅購入時期
●結婚する時
人生の中で、住宅購入を決意する大きなきっかけの一つが、結婚です。
結婚を機に、「同棲するなら家を買おう」「子育てのことも考えてマイホームを購入しよう」と考えるカップルは少なくありません。
結婚と共に家を買うメリットは、賃貸よりも幅広い間取りや価格帯で物件を選べること、共働きなら二人の収入を合算してローンを組めることです。
ただ、結婚直後は収入や支出が不安定になりやすいため、将来のことを考慮して、余裕のある返済計画を立てる必要があります。
●子どもが生まれる時
子どもの誕生も、住宅購入を考えるきっかけです。
一般的に、同じ金額を支払うなら、賃貸より持ち家の方が広い住まいを選べます。
夫婦2人で生活しやすいエリアと、子育てしやすいエリア、子どもが教育を受けやすいエリアが違う場合もあるため、どんな家に住むかだけでなく、どのエリアを選ぶのかも検討すると良いでしょう。
夫婦どちらかの実家に近いエリアで家を買い、支援を受けつつ子育てするのもおすすめです。
●子育てが終わり夫婦2人の生活が始まる時
子育てが一段落し、子どもが独立したら、多くの場合、部屋を持て余すことになります。
子どもの部屋を「帰ってくる場所」として維持するのも親の愛情ですが、掃除や管理の手間、また老後体力が落ちた時のことを考えると、子どもが巣立ったタイミングで2人暮らしに向いた家に住み替えるのもおすすめです。
子育て中は楽しめなかった趣味に打ち込める家にしたり、介護しやすいバリアフリー設計を取り入れたり、車がなくても生活できるエリアを選んだりして、二人で過ごす時間を充実させましょう。
●昇進や昇給が落ち着いたタイミング
昇進や昇給がある程度、落ち着いたタイミングで、住宅購入を検討する場合もあります。
収入の見通しが立てば、住居費としていくら使えるのかを計算しやすくなるため、住宅ローンを払えなくなるリスクも軽減できるでしょう。
ただし、人材の流動性が高まっていることを考えると、20代・30代で収入や待遇が安定する方は多いとはいえません。
現在の収入で家を買うか悩んでいるなら、昇給した、または転職に成功したタイミングで、思い切っても良いでしょう。
家を買うならいくら必要?理想的な貯金額と年収額
●家を買う時の理想的な貯金額
家を買う時に理想的な貯金額は、頭金と諸費用を支払っても、半年分の生活費が手元に残る額です。
頭金は、住宅購入時に先払いするお金で、購入価格の10~20%が相場、諸費用は不動産業者に支払う手数料や税金などのまとめで、購入価格の5~10%が相場となっています。
頭金なしでフルローンを組むという手もありますが、家の資金を全額ローンで用立てると、返済負担が重くなるため、あまりおすすめはできません。
また、家を買った後、急病になり仕事ができなくなる可能性もあります。
そのため、頭金と諸費用を払っても、数ヵ月から半年生活できる貯金があると安心です。
●買いたい時が買い時!理想の年収額は存在しない
家を買う時の理想的な年収は、ありません。
なぜなら、不動産はこだわればこだわるほどお金がかかる買い物だからです。
いくら年収があれば良いのか考えるよりも、「現在の収入で買える家で楽しく暮らす」方が大切なので、マイホームが欲しいと思ったら、家探しを始めましょう。
ただ、日々の返済が苦しいと新生活を楽しめないため、住宅ローンは、借入額を年収または手取りの5~7倍以下に抑えることをおすすめします。
本気で住宅購入を考える前に確認しておきたいポイント
●新築物件と中古物件どちらを選ぶか
本気で住宅購入を検討し始めたら、新築と中古どちらが予算や好みに合うか比較しましょう。
新築の良いところは、最新の技術や設備で建てられた家を、予算の範囲内でカスタマイズできること。
ただし、広告価格等も上乗せされているため、中古住宅に比べると価格が高めです。
中古の良いところは、新築よりも価格が安く、販売数が多いため、物件の選択肢が広いこと。
一方、状態が悪いとリフォームや修繕工事が必須ですし、新築よりもメンテナンス頻度が短いので、修繕費用もかかります。
●一戸建てとマンションの違い
一戸建てとマンションは、同じ金額帯でも間取り・面積・立地の良さが、全くといって良いほど違う住宅です。
基本的には、広い家や広い庭を求めるなら戸建てを、多少狭くても駅に近く、買い物や通勤に便利な方が良いならマンションを選ぶと良いでしょう。
家族の意見をすり合わせて、自分達のイメージに合う住宅を選ぶことが大切です。
●家選びで妥協できないポイントと住まいに求める優先順位
ほとんどの場合、予算も仕様もデザインも、何もかも理想通りのマイホームは手に入りません。
なぜなら、住宅に求める要望が多ければ多いほど、家は高くなるからです。
そのため、住宅購入を考える際は、ご自身にとって譲れない条件や妥協できる点を決め、予算の範囲内でやりくりする必要があります。
どういう家に住みたいのか、できるだけ具体的にイメージできていると、ハウスメーカー選びや物件探しもしやすいです。
●住宅購入時や購入後に使える減税・補助金
家を買うとお金をもらえる「すまい給付金」や、ローンを組むと最大13年間税金が安くなる「住宅ローン控除」、親族から住宅購入資金を一定額非課税で援助してもらえる「贈与税の非課税措置」など、住宅購入者は様々な支援制度・節税制度を利用できます。
これらの制度は、自ら申請する必要がありますし、年度によって利用条件が変わる場合もあるため、家を買う前にどういった制度を使えるのか調べておきましょう。
まとめ
傾向的にいえば、日本では年齢30から40代、年収400から600万円で家を買う方が多いです。
また、長期ローンを組める45歳以下・低金利の条件下なら、お得に住宅ローンを利用できます。
ただし、家を買うタイミングに正解はありません。
結婚・出産・子どもの巣立ちなど、家を買うきっかけも予算も人それぞれ。
欲しいと思った時が買い時なので、新築と中古・戸建てとマンションならどちらが良いのか、利用できる減税制度や補助金はどれなのか等を確認し、ご自身が納得できるタイミングでマイホームを手に入れましょう。