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column 714.
住宅ローン控除、初年度の確定申告のやり方は?2020-09-17
家を建てる際はまとまった費用がかかるので、ほとんどの人は住宅ローンを利用します。そのため、より多くの人が無理なく家を建てられるよう、国は住宅ローンを組む人を対象に税制上のさまざまな優遇措置を用意しています。 その中でも最大の優遇制度ともいえるものが「住宅ローン控除」です。この制度の恩恵を受けるためには確定申告の手続きが欠かせません。 そこで今回は、住宅購入後の初年度の申告手続きについて順を追ってご説明していきます。 住宅を購入したら確定申告が必要になる理由「収入が給与所得だけ」というサラリーマンには、通常は確定申告が必要ありません。基本的には職場が手続きしてくれる「年末調整」だけで納税額を確定でき、源泉徴収を受けた税金の還付などを給与支給額の調整だけで済ませることができるためです。 しかし、前年中に新たに住宅を購入した人は、サラリーマンであっても確定申告の手続きをしなければなりません。 そもそも確定申告はその年の収入や経費、控除項目を届け出て、所得を確定させることで支払うべき税額を自ら申告するものです。 会社が手続きしてくれる年末調整では、初年度の「住宅ローン控除」が対象となりません。初年度は提出書類が多く、一度に多くの人をチェックする年末調整では対応しきれないのです。医療費控除やふるさと納税など、ほかにも住宅ローン控除と同様に年末調整の対象外となる控除項目もあります。 こうした控除を受けられる年には、忘れずに自ら確定申告を行い、納めすぎた税金の還付を受けましょう。2年目以降の住宅ローン控除は、確定申告せず年末調整で済ませることができます。 住宅ローン控除とは住宅ローン控除は「住宅借入金等特別控除」の通称で、「住宅ローン減税」とよばれることもあります。新しく住宅を購入した人や、特定の改修工事を行った人などを対象に、年末時点の住宅ローン残高に対して1%の税金が原則10年間控除される制度です。 年間の最大控除額は40万円で、10年間の累計控除額が最大400万円となります。さらに新築・未使用の認定長期優良住宅や認定低炭素住宅だと、年間の最大控除額が50万円に拡充されます(累計控除額最大500万円)。 さらに令和元年10月から令和2年末にかけて、消費税率10%で取得した住宅については、控除期間が10年から13年に拡充されています。 住宅ローン控除を受けるには、「控除を受ける人の年収が3,000万円以下」「ローンの返済期間10年以上ある」「床面積の半分以上を自己が居住する住宅として使用する物件」「床面積が50平米以上」など、いくつかの要件があります。これらを満たしている人が申請すれば、所得税や住民税の一部が控除されます。 ただし「控除」とは、本来納めるべき税金から金額を差し引くという意味の制度です。もともと支払う予定の所得税や住民税の金額が少ないと、住宅ローン控除の控除枠が使い切れないこともよくあります。 住宅ローン控除はコストメリットの大きな優遇措置ですが、減税の枠を確保しようと減税枠ギリギリの金額の物件を買うと、支払いに無理が出るかもしれません。購入後は無理なく返済が続けられるよう、収入とのバランスを考えながら物件を選ぶことが大切です。 住宅ローン控除のシミュレーションそれでは実際に住宅ローンを組んだ場合、どのような減税効果が得られるのかシミュレーションで確かめてみましょう。ご紹介したように、令和元年10月から令和2年末までに住宅ローンを組んだ人は、控除期間が13年間に拡充されます。そのため、このシミュレーションでも住宅ローン控除の適用期間を13年間としました。
次の表において、色のついた部分が実際の控除額となる数字です。1年目は「所得税+控除対象住民税」、2年目から10年目までは「住宅ローンの年末残高の1%」、11年目から13年目までは「建物の取得価格の2%÷3(3,500万円×0.02÷3=23.3万円)」が適用されることがわかります。 単位:万円
制度上の年間控除額は最大40万円ですが、新築未使用の認定長期優良住宅や認定低炭素住宅の場合は、最大50万円まで拡充されます。このシミュレーションの場合は残高の1%が控除限度額を超える年がないので、40万円という上限額は適用されませんでした。 1年目の「住宅ローンの年末残高の1%」は34.21万円。所得税と控除対象住民税の合計額より少なくなったので、控除枠を使いきれず、実際の控除額は33.95万円になります。それ以降は控除枠の全額を所得税や住民税から引くことができるため、「住宅ローンの年末残高の1%」の全額が控除されます。 11年目から13年目は、「住宅ローンの年末残高の1%」と「建物の取得価格(上限4,000万円)の2%÷3」のうち少ない金額が控除枠となります。この場合、「住宅ローンの年末残高の1%」より「建物の取得価格の2%÷3」の金額が小さくなるので、23.3万円が適用されるわけです。 減税枠が所得税から控除しきれなかった場合、住民税からも一部控除されます。住民税の控除対象額は、課税所得の7%と13.65万円のうち、小さい方の金額です。このケースでは課税所得の7%がすべて13.65万円を超えるため、すべての年において13.65万円が適用されます。 このように実際の住宅ローン控除額は、その人の状況によって大きく異なります。そのため、シミュレーションをしてみるまでいくらが控除できるかは分かりません。控除による効果を知りたい場合は、まずそれぞれの家計に合わせて上記のようなシミュレーションをしてみましょう。 確定申告の方法確定申告は毎年1月から3月15日にかけて受け付けているので、住宅購入の翌年の申告期限内に手続きを済ませましょう。休日の関係で締切日が変わることがあるので、都度確認してください。還付金がある場合は確定申告から約1ヵ月後、指定口座に振り込まれます。 ●具体的な手順1.必要な書類を揃える 住宅ローン控除を初めて受ける年(住宅購入翌年)の確定申告には、次のような書類が必要です。住宅購入に関する書類はすべて1ヵ所にまとめる習慣をつけておくと、のちの手続きが楽になります。
2.必要事項の記入・提出 用意した書類を参考に、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の計算明細書」を記入します。それをもとに、「確定申告書」に記入しましょう。国税庁のサイトにアクセスすれば、パソコン入力でも作成できます。完成したら必要書類を添付し、所轄の税務署に提出しましょう。 初めて確定申告をする人には、書類を見てもどこから記入するべきかわかりにくく感じられるかもしれません。確定申告書類は郵送でも提出が可能ですが、書き方に迷ったときは税務署の窓口や市区町村の相談コーナーで相談しながら記入しましょう。特に確定申告時期は係員が増員されているので、しっかりと対応してくれます。 申告期限が近付くと、窓口が混みあってやや質問しづらい雰囲気になるかもしれません。書類不足や記載不備があって間に合わなくなってもいけないので、不測の事態に対応できるよう余裕をもって申告手続きを済ませましょう。 年末調整の方法住宅購入翌年に確定申告の手続きを済ませた人は、2年目以降の確定申告は必要ありません。職場の年末調整時に書類を提出することで、手続きが完了できるためです。
住宅ローン控除2年目以降の年末調整で必要な書類は、次の2種類です。 1年目の確定申告後、税務署から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」兼「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」が送られてきます。1年に1枚使用し、残りの年数分の枚数がまとめて送られてくるので、なくさないよう必ず大切に手元に保管しておきましょう。 「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」は、金融機関から毎年送られてきます。年末よりもかなり早い時点で送ってくる金融機関が多いので、控除証明書とあわせて保管することをおすすめします。 万が一、年末調整に間に合わなかった場合や、手続きを忘れてしまった場合は、期限内に確定申告手続きをすれば控除が受けられます。住宅ローン控除の有無で税額がかなり違ってくるので、諦めずに手続きしてください。 ふるさと納税を利用している場合は要注意ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄附をすることで寄附金の額に応じた控除を受け、所得税や住民税の金額を抑えられる制度です。
【控除額の算出式(最大)】 つまりふるさと納税で寄附した金額は、通常だとほぼ控除というかたちで戻ってくるわけです。さらに、ふるさと納税に対しては返礼品を用意している自治体が多く、最大で寄附金額の3割にあたる返礼品が受け取れます。つまり実質2,000円の負担で、返礼品が受け取れることになり、そのお得さから近年では利用者が急増しています。 ただし、ふるさと納税も控除制度なので、支払った税金がなければ控除を受けられません。 住宅ローン控除を利用すると、税額控除を受けられるので支払う税金の金額がぐっと少なくなります。所得税がすべて戻ってくる人も少なくありません。 それまで毎年ふるさと納税で税金の控除を受けていた人でも、控除が受けられなくなる可能性があります。そのため、住宅ローン控除を受ける年にはふるさと納税の寄附をしてメリットが出るかどうか、事前にシミュレーションをしてみましょう。 まとめ住宅ローン控除は、住宅購入者へのさまざまな優遇措置の中でも最も効果が大きいといえる制度です。住宅購入の翌年は必ず確定申告の手続きを行い、その恩恵を十分に受けましょう。 こうした手続きの中でのちのち必要になってくる書類が多いので、住宅購入に関する書類は1ヵ所にまとめておくことが大切です。
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