やる気と根気さえあれば、不動産売却をしたことのない人でも不動産を個人で売却できます。
ただし、宅地建物取引士という専門資格があることや、不動産売却を不動産会社が請け負っていることからもわかる通り、不動産売却手続きは決して簡単とはいえません。

そこで今回は、不動産を個人売却できるのか、個人売却する場合のメリットやリスクにはどのようなものがあるのかを解説していきます。

●不動産売却は資格を持たない個人でも可能

不動産売却には、「宅地建物取引士」という資格が必要だと考えている人も少なくありません。

事業として不動産を取り扱う不動産会社は、法律によって一定数以上の宅地建物取引士資格を持つ従業員を確保することを義務付けられています。
また、取引の際に物件の広さや場所、売買金額等の重要な内容を説明する作業、「重要事項説明」も宅地建物取引士の仕事です。

不動産会社を通じて不動産を売買する場合、必ず一度は宅地建物取引士資格を持つ担当者から重要事項説明を受けるため、「不動産売却は宅地建物取引士の資格がないと違法なのではないか」というイメージが広まっているのでしょう。

ただ、宅地建物取引士が必要なのは、ビジネスとして不動産の仲介や取引を担当する場合だけ。
不動産ビジネスをしていない個人が、第三者へ自分の家を売ってもビジネスにはあたりません。

事業として継続的に家を売ったり買ったりして利益を得ない限り、資格を持たない個人でも不動産は売却できます。

●仲介手数料を節約できる

不動産売却を業者に仲介してもらうと、「仲介手数料」という費用の支払いが必要です。
仲介手数料の上限額は、「宅地建物取引業法」という法律で決められており、

不動産の売却額×3％+6万円+消費税

という計算式で簡単に求められます。
仮に1,000万円で家を売却したら、仲介手数料だけで最大388,800円支払う計算です。

個人売却を選んだ場合、当然不動産会社に仲介をしてもらうわけではないため、仲介手数料はかかりません。
不動産を個人売却すれば、節約したお金で新居の家具や家電を買ったり、引っ越し費用に当てたりできるでしょう。

●消費税なしで売却できる

普段、何気なく納めている消費税は、「仕事として提供されているサービスや品物にかかる税金」です。

不動産業でない売り主が、不動産業でない買い主へ家を売る場合、土地や建物の売却代金に消費税はかかりません。

一旦不動産業者に仲介してもらうと、不動作売買が「事業として提供されるもの」になってしまうので、極限まで売却のコストを抑えたい場合は個人売却を検討してみても良いでしょう。

　　

●売り出し価格も誰に売るかも好きなように決められる

不動産の個人売却は、売却手続きや売却のリスクをすべて自分で負う代わりに、売り出し価格も売る相手も好きなように決められます。

不動産業者に仲介してもらうと、査定額が思ったほど高くならない場合もあるため、思い入れがあるから高く売りたい、高額売却できないと困るといった事情があるなら個人売却を検討しましょう。

●個人売却はとにかく手続きが面倒

不動産の個人売却は、とにかく手続きが面倒です。
物件の査定や売り出し価格の決定、宣伝・広告に問い合わせのメールや電話への対応、内覧の案内に売買契約書の作成まで、すべて自分で行う必要があります。

契約書の内容に不備があると後々トラブルになる可能性があるため、最低限の法律知識や不動産知識の勉強も必要です。
よほどの熱意がない限り、途中で投げ出してしまうことになるかもしれません。

●思っているほど高く売れない、売れ残る

不動産に定価はありませんが、おおよその相場はあります。
不動産売却の経験がないと、客観的な査定ができません。
そのため、主観的な査定をして相場より高い値段で家を売り出すといったミスをしがちです。

どれだけ思い入れがあっても、赤の他人である買い主には関係ありません。
不動産売却では、客観的に住まいの状態をチェックしたうえで、値付けや宣伝広告をする必要があります。

適当な値付けをすると、売れ残ったり買い叩かれたりする可能性が高まります。

●買い主を見つけてもローン審査に通らない

不動産売却では、買い主がローンを組むときに、金融機関から「重要事項説明書」や「売買契約書」の提出を求められます。

しかし、重要事項説明書を作れるのは、宅地建物取引士の資格所有者だけ。
個人売却だと重要事項説明書を用意できないので、住宅ローンの審査に落ち、取引そのものが流れてしまうケースが多いです。

不動産は、宅地建物取引士の資格を持っていなくても個人で売却できます。

しかし、仲介手数料や消費税を節約できる一方で、手続きが面倒だったり、トラブルになりやすかったりするため、安易におすすめできるとはいえません。

不動産の短期売却や高額売却を目指す場合は、信頼できる不動産会社を見つけて買い主探しを仲介してもらった方が安心です。