「農地を相続したものの、使う予定がなくて困っている」という人は少なくありません。
使う人のいない農地は、管理せずに放置すると資産価値が下がってしまいますし、持っていても固定資産税がかかるだけなので、できれば売却するのが一番です。

ただ、何らかの事情があって、「土地を持っておきたい」と考える人もいます。
農地の売却にはさまざまな制限やハードルがあるため、売却手続きの時間を取れない場合もあるでしょう。

そこで今回は、農地を売らずに活用する、おすすめのアイデアを共有します。

●使わない農地・余っている農地を他人に貸して賃料を取る

もし、使わない農地や余っている農地を売却したくないなら、「近隣の農家に貸す」のがおすすめです。

現代の農業は、便利な農業用の機械があるので一人でも広い田畑を管理できます。
売上に余裕があり、「もっと広い農地を使いたい」と考えている農家が近くにいれば、農地をレンタルして、維持費も捻出できるでしょう。
他人に農地を使ってもらえば、休耕地として土壌がやせてしまう心配がないのもポイントです。

ただし、契約内容に問題があると後々トラブルに発展する可能性があります。
農地のレンタル自体も、売却と同様地域の農業委員会から許可を取る必要がある行為なので、土地の賃貸借契約を結ぶときは、不動産のプロに相談しましょう。

●企業や自治体に農地をレンタルして稼ぐ

「他人の農地を買い取ったり借りたりしてでも農地を広げたい」と考えられるくらい、事業がうまくいっている農家はけっして多くありません。

後継者不足や人口減少で悩んでいる自治体の農地を持っている場合、むしろ「農業をやめようか悩んでいる」農家の方が多いケースもあります。

そんなときに注目して欲しいのが、企業や自治体への農地レンタルです。
たとえば、行政と企業がタッグを組んで実施している「農業体験」や「移住のお試しプラン」などに自分の農地を使ってもらえれば、賃料を取りつつ自分の土地を維持できます。

また、「農地バンク」といって、「農地を貸したい」「自分で農業をする元気がない」という農地の所有者から土地を借り上げ、運用しているサービスを頼るのもおすすめです。
農地バンクに土地を任せれば、機関側で他人への貸し出し手続きをしてくれるため、農地の所有者が自分で借り主を探したり、レンタル料金について交渉したりする必要もありません。

何より、農地バンクは国の政策を受けて作られた組織です。
「これから農業にチャレンジしたい」という人の挑戦も後押ししているため、安心してしばらく使う予定のない農地を預けられます。

●農地を転用して太陽光発電設備を設置する

農地は、地目（土地の種別）が農地のままだと、農業以外の用途には利用できません。
しかし、地目の変更手続きを行えば、農業以外のビジネスにも利用可能です。

もし、所有している農地が郊外にあり、十分な日当たりを確保できる場合は、太陽光発電設備の設置を考えましょう。
政府の方針によって自家発電した電力の売電価格は年々下がっているものの、土地を使わずに遊ばせておいた場合、収入はゼロです。

投資として太陽光発電システムを購入して設置し、作った電力を電気会社へ売却すれば、日当たり次第で黒字を出せるでしょう。

●農地を転用して駐車場経営を始める

太陽光発電のように、初期投資の大きなビジネスに興味を持てない場合、また比較的住宅街や繁華街に近い場所に農地を持っている場合は、農地を駐車場にするという手もあります。

車の所有率が高い地方なら、ある程度安定した収入を確保できるでしょう。

●アパートやマンションを建てて不動産経営をする

よりリスクを抑えて農地を活用したい人におすすめなのが、賃貸不動産経営です。

太陽光発電と同じく初期投資はかかりますが、入居者さえ確保できれば十数年以上継続して家賃収入が入ってきます。
物件の管理は管理会社に委託すれば良いので、本業があっても手を出しやすいのがメリットです。

残念なことに、すべての農地で今回ご紹介した手段が通用するわけではありません。

初期投資が用意できなかったり、投資のための手続きが面倒だったり、地域の農協との伝手がなくて農地の借り主を探せなかったりする場合もあります。

どの道、農地を持っていても、マイホームの宅地として利用するためには土地の転用が必要です。
むしろ、固定資産税等の維持費がかかるだけ損をしてしまうので、活用できない場合は思い切って手放しましょう。

使わない農地は、基本的に売却するのがおすすめです。

しかし、どうしても土地を売りたくない、何らかの手段で活用したいと考えているなら、持て余している土地を誰かに貸して、利益を出しましょう。
近隣の農家や農業法人、自治体に農地バンクなど、農地を欲しがっている相手は探せば意外と見つかります。

とはいえ、農地の賃貸も売却も、自分ひとりで手続きをするのは大変です。
農地の扱いに関して悩みがあったら、ぜひ一度、長年地元で営業している不動産業者へご相談ください。