「不動産の売却価格を知りたいけど、業者に頼むと契約を迫られそうで不安」「業者に相談する前に査定額を知っておきたい」という方は、査定額を自分で計算してみましょう。
意外かもしれませんが、簡易的なもので良ければ不動産の査定は個人でも可能です。

この記事では、不動産の査定額を自分で計算する方法や、自分で査定をしてみるメリット、業者が行う査定との違い等を解説していきます。

●固定資産税の納税通知書から計算する

不動産の査定額を自分で計算する最も簡単な方法は、固定資産税評価額を使うやり方です。
固定資産税評価額とは、不動産を持っていると毎年発生する税金、固定資産税の税額計算に使われる不動産価格のこと。
日本では、公平かつ適切な課税ができるよう、自治体によって3年毎に固定資産税評価額が調査・更新されています。
固定資産税評価額を見れば、土地や建物が持つおおよその価値が分かるのです。

ただ、固定資産税評価額はあくまでも課税用の数値なので、時価よりも30％ほど安くなるように調整されています。
不動産の査定額は、「これくらいの額で売れるだろう」という予想額、つまり時価に近い金額です。
固定資産税評価額から不動産査定額を求めるときは、「固定資産税評価額÷0.7」を計算しましょう。

なお、固定資産税評価額は、毎年4月から6月に自治体から送られてくる「固定資産税の納税通知書」に記載されているので、手元に通知書が残っていればいつでも計算可能です。

●近隣の不動産売買データからおおよその査定額を見極める

より実際の売却価格に近い不動産の査定額を知りたい場合は、売りたい不動産の金利で同程度の条件を持った不動産がいくらで売れたのかを調べ、平均を取るという方法が使えます。
過去の販売データを参考に査定額を求めるやり方は、「取引事例比較法」というプロも使う査定方法です。

基本的には、不動産の物件情報サイトを使って現在似たような不動産がいくらで販売されているのか集計したり、全国の不動産取引データをまとめたサービス、「REINS Market Information」で不動産売買事例を調べたりして、価格情報を集めると良いでしょう。

とはいえ、取引事例比較法で精密な査定を行うためには、数多くの取引データや不動産価値の判定基準に関する知識が不可欠です。
個人で集められる不動産の売買情報には限りがあるため、不動産業者に頼む査定より精度が落ちることは把握しておきましょう。

不動産業者へ査定をお願いする前に自分で査定額を調べるメリットは、不動産業者の査定が適切かどうかを判断する基準を作れることです。
日本では立地によって土地の価格が決まっているため、ほとんどの不動産が地域の相場に近い金額で取引されます。
そのため、不動産業者の査定額も相場に近い金額に落ち着くのが一般的です。

ただ、なかには売り主側が不動産に詳しくないという点に漬け込んで、相場から外れた査定額を提示してくる業者もいます。
査定結果に根拠があれば問題はありませんが、相場から明らかに外れた査定額を提示するのは、悪徳不動産業者が良く使う手口。

売りたい不動産の査定額を自分で調べていれば、「どうして査定額が相場から外れているんだ」と疑問を持てるため、

• 相場より安い査定額を提示して売り主を不安にさせ、契約を迫って買い叩く
• 高い査定をつけて後日「売れないから値下げを」と持ちかけ、手を組んだ別の業者に安く売る

といった被害を受ける前に契約を断れるようになります。

●机上査定

机上査定は、最も簡易的な不動産の査定方法です。
住所や間取り、築年数といった一部のデータから、おおよその査定額を算出してもらえます。
結果がわかるまで30分とかからないので、インターネットから手軽に申し込めるのが強みです。

ただ、精度に関しては訪問査定に劣ります。
机上査定を一度の複数の業者へ依頼できる「一括見積もりサービス」もあるので、自分で調べた査定額が合っているか確認したいときや、相見積もりの結果から良さそうな業者を選別したいときに利用すると良いでしょう。

●訪問査定

訪問査定は、不動産業者の職員が現地で不動産をチェックし、書面上で分かるデータだけでなく劣化や故障の有無等も含めた査定額を出してもらうやり方です。
査定自体に1時間程度、結果が出るまで1週間ほどかかります。
基本的には、机上査定や一括査定の結果が気になった不動産業者から、詳しく話を聞きたいときに利用すると良いでしょう。

不動産の査定額は、固定資産税評価額から逆算したり、過去の取引事例から平均値を出したりすれば自分でも計算できます。
事前に査定額を把握しておくと、不動産業者側が怪しい査定をしてきたとしても警戒できるので便利です。

ただ、自分で不動産の査定額を計算しても、プロの査定ほど詳しい数値は出せません。
自身の計算結果は業者選びの参考程度に考えて、業者の机上査定や訪問査定を受けましょう。